michael bolton_symphony

前ポストのシンプリー・レッドからのシンフォニー繋がり。マイケル・ボルトンは2018年に、オーストラリアとニュージーランドで60人編成のオーケストラと共演するシンフォニー・ツアーを開催していて、大好評を得た。その勢いに乗って、デビュー50周年記念作品として、オーケストラとの共演による新録ベスト・アルバムを企画。それがこの『A SYMPHNY OF HITS』になる。シンプリー・レッドはライヴ作品だったが、ボルトンはスタジオ録音。それぞれに魅力があるのは言うまでもないが、スタジオ作の方がアルバムとしての完成度が高くなるのは当然だろう。ボルトン、ミック・ハックネル共に、シーンを代表するブルー・アイド・ソウル・シンガー。ハックネルがポスト・パンク、ボルトンがハード・ロックと、デビュー時の音楽はおおよそオーケストラとは縁遠かったのも共通している。

共演しているのは、おそらく極東ツアーで一緒になったと思われるウエスト・オーストラリアン・フィルハーモニック・オーケストラ。パースを拠点とする90年の歴史を持った老舗楽団で、オーケストラ・パートはパースでの録音。指揮とオーケストラ・アレンジはL.A.のクリス・ウォルデンだが、過去にもこの楽団でタクトを振った経験があるそうで、そうした演りやすさを優先したと思われる。ボルトン自身はクラシカル・アルバムのリリースもあって、オーケストラ共演は初めてではないが、こうした壮大なスケールのセルフ・リメイク作品は初。「夢が現実になったようなアルバム」と語っているあたりも、50周年アニヴァーサリーに相応しい。

収録されたのは、ボルトン自身が大のお気に入りという<Said I Loved You... But I Lied>、アンディ・ゴールドマークと書いた<Soul Provider>、ダイアン・ウォーレン作の<Time, Love & Tenderness>、ビー・ジーズのカヴァー<To Love Somebody>、ローラ・ブラニガンに提供して極貧生活から脱するキッカケとなった<How Am I Supposed To Live Without You>、ボブ・ディランとの共作<Steel Bars>、デヴィッド・フォスター作の<The Prayer>、そして定番の名曲<When A Man Loves A Woman>と<The Dock of the Bay>に<Georgia On My Mind>など。ボルトン・ファンならずともお馴染みの楽曲ばかりで、ゆったりと聴くことができる。

AOR的には、時にトゥ・マッチに映るボルトンの歌の濃ゆさも、こうして大編成のシンフォニーを従えると、あまりクドく聴こえず、もたれるコトもない。今更に感じる企画でも、彼にはバッチリとフィットしている。王道とは、きっとこういうモノなのね。