dino & sembello

60年生まれのカナザワよりも少し上の世代の、主にシンガー・ソングライター好きの方々に確固たるファンがいるディノ&センベロ、74年に発表したデュオ唯一のアルバムが韓国 Big Pinkから紙ジャケで初CD化され、国内流通が始まった。AOR世代には、かのマイケル・センベロの兄ジョンが参加したデュオとして知っている人もいるだろう。

ディノことラルフ・ “ディノ”・パラディノとジョン・センベロは、フィラデルフィアのシンガー・ソングライター・デュオ。68年、ジョン・セバスチャン脱退後のラヴィン・スプーンフルに3曲書いたのを皮切りに、タートルズやティム・ハーディンにも楽曲提供。並行して70〜71年にディノ&センベロとしての初シングル、ホームというバンド名義でのシングルなどをリリースしている。

そうした地道な活動が実ったか、やがてヒット・メイカーのリーバー&ストーラーと邂逅。当時彼らがプロデューサー契約を結んでいたA&Mから、本作『DINO & SEMBELLO』でアルバム・デビューした。プロデュースはもちろんリーバー&ストーラーと彼ら自身。参加ミュージシャンには東海岸の一流どころがズラリで、スタッフ結成前のゴードン・エドワーズ(b)を筆頭に、ジョン・トロペイ(g)、リック・マロッタ(ds)、レオン・ペンダーヴィス(kyd)、ジョージ・ヤング(sax)等など。もちろんマイケル・センベロもギターで協力している。結局彼らがアーティストとして注目されることはなかったが、本作からは<Pearls A Singer>がエルキー・ブルックス(77年に全英8位)やピーター・フランプトン、女優バーナデット・ピーターズ、ヴィクター・ラズロらに、<Dancin' Jones>がニコレット・ラーソンやネヴィル・ブラザーズ、<Best Thing>がフィリップ&ヴァネッサやビリー・エクスタイン、<Neighborhood>がヴォンダ・シェパードらに取り上げられ、知る人ぞ知る存在になっている。

このCD化で久々に聴き直したが、なるほどイナタさの中にほのかなソフィスティケイションが漂っていて、なかなかイイ感じ。ホーン隊とクラヴィネットがシティ・ソウルしている<Feels So Good>、新緑が香って来そうなミディアム<The Best Thing>、都市型ファンクの<Holy Moment>、ストリングスと繊細なギターが印象的なジャジー・スロウ<Helpless>、イーグルスっぽいカントリー・ロック・チューン<On The Road Again>、ピアノでシットリ歌われる<Neighborhood>など、好曲が連発される。音楽的にはスティーヴィー・ワンダーのセンスに感化されていたようで、まさにプレAORという印象だ。

70年代末には早々にコンビを解消していたディノ&センベロだが、ディノはその後もジャーメイン・ジャクソンやピーボ・ブライソン、セルジオ・メンデスに楽曲提供。ジョン・センベロは13年に物故したものの、生前は弟マイケルと共にチャカ・カーン『I FEEL FOR YOU』やジョージ・ベンソン『20/20』に参加していた。今にしてみれば、2作目を聴いてみたかった早過ぎたデュオだったな。