waddy wachtel

少し前にご紹介したラス・カンケル同様、ダニー・コーチマー&ザ・イミディエイト・ファミリーの一員として間もなく来日するワディ・ワクテル。去年の来日ではダニー&ファミリーのニュー・アルバムをフィーチャーしていたが、今年の来日はそれがないので、ラスやスティーヴ・ポステルの『WALKING THROUGH THESE BLUES』、そしてこのワディの初ソロ・アルバム『UNFINISHED BUSINESS』を引っ提げての公演になる。

ただしコレを素直に “初ソロ・アルバム” と言ってしまっていいのかどうは、甚だ疑問。何故ならコレはサブ・タイトル " Original Demos, Private Recordings and Rarities" が示しているように、デモ&未発表音源集なのだから。中には、既にダニー&ファミリーの来日公演で披露されている<High Maintenance Girlfriend>や、ネット上で公開されている音源もあるそうだが、こうしてアルバム・サイズで楽しめるのはもちろん初めて。ギタリストとしては数々の名演を残しているワディだけれど、彼自身がフロントに立つ形でフィーチャーされたのは、自ら率いたローニン(浪人)くらいだから、発売と同時に飛びついた音楽ファンも少なくないだろう。

この5月で満72歳を迎えるワディは、ウォーレン・ジヴォン、ジェイムス・テイラー、ジャクソン・ブラウン、リンダ・ロンシュタット、スティーヴィー・ニックスらとの深い縁で知られる。他にもキャロル・キング、アンドリュー・ゴールド、カーラ・ボノフ、ランディ・ニューマン、ドン・ヘンリー等などと交わり、米西海岸派の重鎮ギタリストとして名を挙げた。でもその一方でキース・リチャーズとの活動でも見事なサポート・ワークを見せ、Xペンシヴ・ワイノーズのメンバーになっている。ごく最近リイシューされたキースの1stソロ『TALK IS CHEAP』は、まさにそのひとつ。それを機にストーンズ『BRIDGES TO BABYLON』や、ロン・ウッドのアルバムにも名を連ねた。日本勢では、竹内まりやや奥田民生のアルバムにクレジットあり。吉田拓郎のライヴ・ツアーにも参加していた。

で、このアルバム。内容が内容なだけに、作品としての完成度は高くなく、録音状態が今イチの楽曲、如何にもデモっぽいラフな音源もある。でも楽曲単位で聴いていくと、まさにワディのキャリアを凝縮した作りで、思わずワクワク。西海岸ロック色全開なナンバーや、ストーンズ流儀のロックン・ロール・チューンは当然として、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、エヴァリー・ブラザーズ、バディ・ホリーなど、彼のルーツが垣間見られる楽曲もある。映画音楽まで作っていたのはちょっと意外だったが…。個人的には<Easier>や、スティーヴィー・ニックスが歌詞の一部を書き、ワディとニコレット・ラーソンが歌っている<The Offering>といった、甘〜いポップ・ミディアムの小品がお気に入り。ギター弾きのイメージが強かったので、フレンズ・ライヴで結構歌う人なんだ、と再認識したが、ココでも意外なほど達者なハーモニー・ワークを披露している。

意外といえば、ほとんどの曲を自分一人で演奏しているのも軽い驚き。もっともPCでバリバリにプログラムしているワケではなく、アコギにエレキ、リード、ベース、そしてリズムを多重録音しているに過ぎないが、ホンワカしたムードとは相反するような…。それでも楽曲によって、ジョー・ウォルシュやラス・カンケルのクレジットがある。<Slide Slow>は、ローニンの2作目用に作られたデモ・チューンで、演奏陣もリック・マロッタ(ds)、ダン・ダグモア(g)、スタンリー・シェルドン(b)のローニン・チームだ。