al sunny

カナザワがP-VINEとのコラボで展開中の【Light Mellow Searches】、ちょいリリースから遠ざかっていたが、今年初のご紹介、アル・サニーのデビュー盤が、来週15日に発売される。AORというよりは、いま何かと話題のヨット・ロック・テイストが漂う一枚で、ノスタルジックなUS的解釈、ウエストコースト色を汲む欧州的解釈、新時代のAORセンスを感じさせる日本的解釈のクロスポイントに位置する、極めて今様のAOR / ヨット・ロック・アルバムではないかと。

アル・サニーは、フランスのソウル・シーンから現れたアーティスト。個人名みたいに見えるが、実際は フランスの若手シンガー・ソングライター/アレンジャー/ギタリスト、アレキサンドレ・トライカードのワンマン・プロジェクトで、クレジットには「作編曲:アレキサンドレ・トライカード」としっかり明記されている。ポップ、ロック、ソウル、それにエレクトロ・ミュージックに影響を受け、音楽学校では作曲家を目指した。インスピレーション・ソースはアル・グリーンやアル・ジャロウ、アメリカ、そしてブラジルのソウル・レジェンド:チン・マイア(エヂ・モッタの叔父でもある)など。スティーリー・ダンやドゥービー・ブラザーズ、ボズ・スキャッグス、プレイヤー、アンブロージアといった、70〜80年代の米西海岸サウンドにも大きな憧れを持っている。このアルバムでネッド・ドヒニー<Get It Up For Love>のカヴァーを取り上げているのも、その表れだろう。

そのネッドは、今やヨット・ロックの象徴的存在になっている。最近も、ミュージック・マガジン誌19年3月号『AOR/ヨット・ロック・ベスト100』というランキングでトップに選ばれたのが記憶に新しいが、このアル・サニーのアルバムは、実はその2年前、17年5月のリリース。如何にアルがセンスを先取りしていたかが分かる。ところがアルバムは一方で、これまで仏盤12インチLPとデジタル・リリースしかなく、CD需要が高い日本では先物買いのマニアに知られるだけの存在だった。そこで今回、世界初CD化に踏み切った。

内容は、程よいユルさのメロウ・ミディアムや軽やかにハネるブラジリアン・ソウル・チューン、ミッド70’s 風味のブルー・アイド・ソウルなどがスシ詰め状態。ブギー・ファン歓喜の4ツ打ちダンサー<Open Up Your Eyes>は、12インチのリミックス盤も発売された。そもそもアーティスト名に “サニー” と名付けるあたりのダサかっこ良さが、とてもヨット・ロック的に思える。

約2年遅れの本邦デビューだけあって、秋頃には早くも第2作が登場するらしいが、それまではまずこのデビュー盤をジックリと。