tokyo BG

遅ればせながら、角松敏生 Performance 2019『TOKYO BOYS AND GIRLS』、5月21日(火)の戸田文化会館公演のレポートを。1ヶ月半に及ぶ13都市14公演の3本目。まずはツアーが順調に滑り出したのに加え、初のソールドアウト・ショウでもあったから、スタート前から「きっと良いステージになるだろう」という確信はあった。行く先々で各地のダンス・スクールのパフォーマンスを交える試みも、角松らしいところ。本人も当日まで内容を知らないそうだから、それだけワクワク感の高いツアーなのではないかと思う。とはいえ、重い扉を開けてホールに足を踏み入れてステージに目を遣れば、“セットではなくヒトに金をかける” という言葉通り、ステージ上は至ってシンプル。上手上段に5管が並ぶセッティングに、ゾワゾワと期待が高まった。

(以下ネタバレあり)

メンバーは森俊之(kyd)、山内薫(b)、鈴木英俊(g)、山本真央樹(ds)に、本田雅人(sax)率いる5管のホーン・セクションは、前回ツアーのビッグ・バンドからの選抜。そしてこの日のバック・ヴォーカルは、吉沢梨絵と吉川恭子の強力ママさんチーム。角松もMCで、「ウチのママさんコーラスは一味違います」と言っていた。

客電が落ちて始まったのは、意外にも凍結前のメロウ・ファンクな<Lost My Heart In The Dark>。続いてザ・システム譲りの<I Can't Stop The Night>を矢継ぎ早に畳み掛ける。新作が出たあとのツアーというと、その新作1曲目でショウをスタートさせるのが角松の常套手段だったが、今回はミニ・アルバムだし、ダンス・チームとの仕掛けもあるし、ってコトで、意外にも 80'sブギー・ブームに通じるこの辺りをオープニングに持ってきたのだろう。熱心な角松ファンは「うわぁ、懐かしい曲」と大喜びだったかもしれないが、実は比較的新しいファンの志向性をも意識した、攻めのセレクトというべきだろう。中盤にも<Secret Lover>、終盤にも超久しぶりの<Space Scraper>など、解凍前のナンバーを多くセレクト。『GOLD DIGGER』からは3曲も演ってくれた。年季の入ってるファンは素直に馴染んでしまうが、コレは本人の真意を探りたいところだな。

またコーラス隊といえば、ひな壇後方の袖近くに2人並ぶのがお決まり。でも今回は「君たちは側にいて…」という角松たっての願い?で、ご両人が角松の左右やや後ろに立つというトライアングルのポジション。しかもステップを踏みながら角松に絡んだり、左右が入れ替わったりするのが新しい。そのうえ『東京少年少女』コーナーでは、更にその両側でダンス・チームがパフォーマンスするから、効果は倍増する。「セットより人」の威力が最高潮になった瞬間だった。

それにつけても、やはり圧巻は、『東京少年少女』から一気にノン・ストップで披露した5曲である。『THE MOMENTS』のゴスペルやプログレ風味、『BREATHE FROM THE SEASON 2018』のビッグ・バンド・スタイルなど、近年の角松の美味しいトコを掻い摘んで、ミュージカル仕立ての総集編にまとめた感あり。個人的には、ココ数年のツアーで一番楽しめたショウになった。10人ほどで構成されたダンス・パフォーマンスも、あくまで音楽を素材に構成されており、その中心には角松サウンドがドカンと鎮座ましましている。ミュージカルとは違って、ストーリーが先行してしまうトコロは皆無。若きダンサーたちのキレッキレのパフォーマンスには、ただ目を奪われた。

スケジュールの都合で、今ツアーのレギュラー・コーラスである小此木まりが不参加ということもあって、モア・アンコールは彼女とのデュエット<It's So far Away>ではなく、<See You Again>で締め括る構成。でもコレが歌われるのは全国4カ所だけなので、かえって貴重だったのかも。ま、それも中野でもう一回観られる、という前提あって話だが…

最後のMCでは、「あと5年は突っ走って、そのあとは…」みたいな発言をしていたけれど、あの凍結の時だって、最初内輪には「引退」をブチ上げていたヒト。多小テンションがゆる〜くなっても、歌い続けていればそれでイイ、と思っている。どんな時もブレないことが山下達郎の是であるなら、進化し続けることが角松の道。どちらも大変だけれど、歳を喰っても感性を磨き続ける方が、より難しくなってしまうのではないか。まぁ、達郎さんほどのポジションにいれば、それ以外でも伸し掛かるプレッシャーが多いのだろうけど…。

何れにせよ、角松は最後の最後まで見届けないと…、だな。

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