alan parsons_secret

ここ数年はライヴ盤やシンフォニック・プロジェクトのライヴ映像作など、スピン・オフ的作品ばかりが目立ったアラン・パーソンズ。スタジオ・レコーディングによるソロ新作としては、04年作『A VALID PATH』以来15年ぶりとなるニュー・アルバム『 THE SECRET』が4月末にリリースされた。オリジナル原盤は、先日ピックアップしたマイケル・トンプソン・バンドと同じ 伊Frontiers。DVD付きやアナログ盤、アナログのデラックス箱なども用意されている。カナザワもそそくさと輸入盤をゲットしたけれど、ようやく日本盤もDVD付き2枚組が7月末に出ることが決まったようだ。

アルバム・タイトルよろしく、リリースまでは秘密のヴェールに包まれていたこの作品。アラン自身も多くを語らず、ルー・グラム(ex - Foreigner)やジェイソン・ムラーズがゲスト参加していることだけが漏れ伝わってきた。あたかも15年ぶりの期待感を煽るように。

でも実際に聴いた感想は、15年という時間の経緯に関係なく、アラン・パーソンズはアラン・パーソンズ以上でも、以下でもない、ということ。そりゃあアラン・パーソンズ・プロジェクト(APP)時代は、優れたシンガー・ソングライターであるエリック・ウールフソンが相方として傍らにいたワケで、あの頃のような深さ、針の穴を通すような完成度の高さは求め得ない。冷めた言い方をすれば、今度のソロ作は、あの頃のサウンド、スタイルを、アランが一人でなぞっている、といった感じなのだ。確かにアランの音は鳴っているが、ハートを鷲掴みにされるほど強い吸引力ではないんだな。従来のAPPファンなら黙って馴染む作品でも、ご新規ファンにオススメするなら、まずは『EYE IN THE SKY』、それから『EVE』や『運命の切り札(The Turn Of A Friendly Card )』を手渡す。

参加ミュージシャンにもAPP時代の顔ぶれは少なく、シンフォニック・プロジェクト・ツアーに参加した若手〜中堅セッション・ミュージシャンが多数。グレン ヒューズやチャド・スミス周辺で活躍し、一時はエイジアにも名を連ねたギタリスト:ジェフ・コールマンの名が目立つくらいだ。それでも一番勘ドコロを掴んだギターは、2曲のみ参加している黄金期のメンバー:イアン・ベアンソン(ex-Pilot)だったりして。

オープニングを飾るオーケスラとのクラシック・チューンには、スティーヴ・ハケット(g)、ジェイクシマブクロ(ukulele)、ヴィニー・カリウタ(ds)、ネイザン・イースト(b)らのクレジットが。それ発見した時は、メチャ高揚したけれど、コレは完全に看板倒れに終わる 結局、ジェイソン・ムラーズが突き放したように歌う<Miracle>、ルー・グラムが期待に応えたムーディなスロウ・ナンバー<Sometimes>が一番良くて。アラン自身が歌う<As Light Falls>は、APPとマイク&ザ・メカニクスを掛け合わせたような好曲。

楽曲によって往年のピンク・フロイド、ジェネシスあたりを思い出させたりするけれど、ソツなく引用したに過ぎず、斬新さには乏しい。せっかくスティーヴ・ハケットを呼んでいるのに、初期ジェネシスを思わせる<Fly To Me>に不参加、というのも解せないなぁ。

いずれにせよ、新しいファンにアピールするのは難しそうでも、従来ファンへの近況報告であるなら、ひとまずOK。少なくても、PCでの音作りが主体でアンビエントっぽくなって不評を託った全スタジオ作『A VALID PATH』よりは、ゆったり安心して聴ける。トライすれば「よく分からん」と叩かれ、そのままでは「マンネリ」と揶揄される。ファンとはおおよそ身勝手なモノだけど、その狭間でバランスを取りながら、確実に進歩して彼らを納得させるのが、ビッグネームに課せられた使命なのよ。






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