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ヨット・ロックなる新潮流に後押しされたか、昨年秋に紙ジャケCDで復刻した『LIFE AFTER ROMANCE』が、殊のほか好セールス。後続のポリスター期2作『LOVE LIKE OURS 』(91年)と『BETWEEN TWO WORLDS』(93年)も、紙ジャケット仕様で来週リイシューと相成った。初回CDは共に、歌詞や解説まで閉じ込んだフルカラーの豪華ブックレットが付いていたので、この紙ジャケCDも、『LOVE LIKE OURS 』が見開き、『BETWEEN TWO WORLDS』が3面見開きという豪華装丁になっている。監修者である自分も、届いた商品サンプルを見てチョッとビックリ アナログ盤のない時代の作品とはいえ、これは思わず紙ジャケ買いしたくなってしまうファンもいるだろうな。

ネッドの復帰第2弾『LOVE LIKE OURS』は、彼がラジオ・パーソナリティを務めたFM番組『Postcards From Hollywood』がスタートして間もない頃のアルバム。参加メンバーは、ジョン・ロビンソン/ゲイリー・マラバー(ds)、ジミー・ハスリップ(b)、マイケル・トンプソン/ドナルド・グリフィン(g)、アーロン・ジグマン/キャット・グレイ/アラン・パスカ(kyd)、ボビー・ライル(ac.piano)、ジェラルド・アルブライト(sax)、マリリン・スコット/レスリー・スミス/マクサン・ルイス(cho)など、AOR好きには納得の顔ぶれが揃っている。、そして<Perish The Thought>には、何とビックリ、アサイラム時代のレーベル・メイトであるJ.D.サウザーがクレジットされている。レコーディングは前作発表直後からスタートしたが、その時点では必要な楽曲の半分程度しかできておらず、残りの曲作りを進めるうちに冒険心が芽生えたとか。そして初めて本格的にコンピュータを導入し、6曲にドラム・プログラミングを使った。前作と比較すると、<What’cha Gonna Do For Me>のようなキラー・チューンこそないものの、楽曲クオリティは負けず劣らずで、アルバム・トータルで粒が揃っている。

対して『BETWEEN TWO WORLDS』には、キャット・グレイ(kyd)、ジミー・ハスリップ(b)、ゲイリー・マラバー(ds,perc)に、Mr.ミスター〜現キング・クリムゾンのパット・マステロット(ds)、コーラスでレスリー・スミス、マリリン・スコット、マクサン・ルイスらが参加。ネッドはヴォーカル、ギター、キーボードに加え、前作からのコンピュータ・プログラムへの取り組みも より深いモノになり、多くの楽曲でドラム・サウンドを担った。しかもタイトル曲<Between Two World>や<Too Late For Love>は、キャットと2人だけでトラックを完成させている。聴きモノは、盟友ヘイミッシュ・スチュアートとの共作でジョージ・ベンソンに提供した<Never Too Far To Fall>のセルフ・ヴァージョン。ヘイミッシュのアヴェレイジ時代の相棒アラン・ゴーリーがソロ作『SLEEPLESS NIGHTS』(85年)で歌っていた<Diary of a Fool>は、ネッドが歌った初めてのカヴァー曲になった。

この『BETWEEN TWO WORLDS』の収録曲中6曲は、10年に発表された現時点での最新作『THE DARKNESS BEYOND THE FIRE』(日本発売は18年)でセルフ・リメイクされるが、ネッドはそれについて、「曲そのものはとても気に入っていた一方で、オリジナル・ヴァージョンにはシックリ来ないところがあった。あれらの楽曲は更に良くなって然るべきだと思っていた」と発言している。でも、確かにサウンドメイクや一部歌詞が差し替えられていたものの、ドラスティックな変化は皆無。ネッドがどんなところに「微調整が必要」と判断したのか、そのあたりを実際に聴いてジックリ探ってみてほしい。

どちらのアルバムにも、ボーナス曲が1〜2曲追加収録されているが、それは上掲2作の間にリリースされた、アコースティック・セルフ・カヴァー集『POSTCARDS FROM HOLLYWOOD』から。先行発売の『LIFE AFTER ROMANCE』収録のボーナス曲と合わせ、これで『POSTCARDS FROM HOLLYWOOD』の楽曲はすべて網羅されたことになる。

ちなみにその『LIFE AFTER ROMANCE』は、この2枚の紙ジャケCD復刻と同時にアナログ盤でも再発売。そちらは初版時の88年にもアナログ盤が同時発売されていたが、世はスッカリCD時代ということでごく少数しか流通せず、最近はオークション市場で高値の花と化していた。良い子の皆さんは、そうしたボッタクリに引っ掛からず、適価で最新プレスをゲットしませう

ボズ・スキャッグスが少し前にインタビューに答えていたのと同様、「“ヨット・ロック”という表現はキライ」というネッド。でもそれもボズと同じく、 “ヨット” というイメージへの反応だ。「とてもソフトで気ままな音楽のようなイメージを抱かせるからね。とはいえ、自分の作品が何かの形で広く認知されるのは素晴らしいことさ」

再評価著しい『HARD CANDY』や、近年発掘された『PRIVATE OCEAN』でネッドを知った方々にも、是非この90年代の彼の歌を聴いてみて欲しい。