paul_amoeba gig

先月リイシューされたポール・マッカートニーのライヴ盤4作のうち、何故か買いそびれていた『СHO BA В СССР(バック・イン・ザ・U.S.S.R.)』(88年)と、初のフルサイズ収録となった『AMOEBA GIG』を輸入盤(デジパック)でゲット。日本盤は、購入見送りの『WINGS OVER AMERICA』(78年)と『PAUL IS LIVE』(93年)と併せてすべて紙ジャケット仕様だが、『OVER AMERICA』は東芝時代の初回紙ジャケとデラックス・ボックスがあるので今更感が強く、『PAUL IS LIVE』はオリジナルからしてCDなのに、紙ジャケにする必要があるのか?と。紙ジャケなら何でもOK、という紙ジャケ・マニアも多いと聞くけれど、カナザワの場合は “オリジナル・アナログ盤のミニチュア” という建前を重視する。アナログ盤に親しんでいたからこその紙ジャケ、というコダワッリだ。だからCD時代のオリジナル作を勝手に紙ジャケ化されても、ほとんどソソられない。

そんなワケでリイシュー4作のうち2枚だけ買ったワケだが、ハリウッドの巨大レコード・ショップ:アメーバ・ミュージックで開催されたシークレット・ギグの完全盤が予想外に良いデキで、ちょっとビックリ。元々は07年6月に行われた当時の新作『MEMORY ALMOST FULL(追憶の彼方に)』のプロモーションとして組まれたインストア・ライヴで、当時は900人ものオーディエンスが詰めかけたとか。そしてその中にはリンゴやジェフ・リン、ジョー・ウォルシュ、アラニス・モリセットなどの姿があったという。

そして同年11月には、その時に披露した4曲が、アメーバの自主レーベルからアナログLPで発売。その後CDでもリリースされた。それが今回、当日披露された全21曲のフル尺仕様で登場したのである。

ポールはこの4枚の他にも、 『TRIPPING THE LIVE FANTASTIC』(90年)、『UNPLUGGED (The Official Bootleg)』(91年)、『BACK IN THE U.S.』(02年)、『BACK IN THE WORLD』(03年)、『GOOD EVENING NEW YORK CITY』(09年)、更に映像作品で『ROCKSHOW』(76年)、『GET BACK』(91年)、『IN RED SQUARE』(05年)など、多くのライヴ作品を残してきた。それは取りも直さずポールがライヴ好きであることの証明と言えるが、特に乱発気味になった90年代以降のライヴ作品は、ツアー記録としてのニュアンスが強くなった気がして、個人的には今イチ楽しめずにいた。サーヴィス精神旺盛なポールが何かを仕掛ければ仕掛けるほど、ステージが大げさになって、エンターテインメント色が濃くなっていく。もちろんそれはそれで悪いコトではないけれど、自分はもっと音楽だけを濃縮したパフォーマンスを期待していた。だからポールのライヴで愛聴してきたのは、バンド感の強い『 WINGS OVER AMERICA』と映像の『ROCKSHOW』、ソロでの初来日時期に収録されて思い入れの強い『GET BACK』あたりだった。

でもその頃のような熱気が、このアメーバでのライヴ盤には詰まっている。何もギミックもない代わりに、オーディエンスとの距離がまるで近いインストア・ギグ。久しくそんなシチューションを経験できなかったポールは、デビュー前のキャバーン・クラブ時代や、ウイングス結成直後の大学ツアーを思い出し、一層歌と演奏に没頭したのは間違いない。新作のプロモーションなのに、セットリストの半分がビートルズ時代のレパートリー。しかも<I'll Follow The Sun>のエンディングを何回も繰り返すなど、ライヴでありがちなウケ狙いもあったりして…。ポールはホント、楽しかったんだろうな。そういう気分がダイレクトに伝わってくるライヴ盤だ。現場のアメーバには一度行ったことがあるけれど、天井が高くて床面積が広く、ちょっとした体育館のようだった。

さて、コレが出たなら、あとポールに強く望むのは、『WINGS WILD LIFE』と『RED ROSE SPEEDWAY』のユニバーサル・ジャパン限定抱き合わせボックスだけに特典として付けられた『WINGS OVER EUROPE』(前述したウイングス結成直後の大学ツアーから収録したライヴ)の一般発売である。自分は聴いたことがないが、そこにはきっと、本作のように溌剌と歌い、ベースを掻き鳴らすポールがいるはずなのだ。