jess roden band

英国の実力派ロック・シンガーで最も過小評価されている男、ジェス・ローデン。アラン・トゥーサンのプロデュースによる1stソロ『JESS RODEN』(74年)は、ブルー・アイド・ソウル好盤としてそこそこ知られていると思うが、2nd『THE PLAYER NOT THE GAME (愛の狩人)』(77年)がサバービア誌に載ったのをイイことに、80年のソロ3作目『STONECHASER』を拙著『AOR LIGHT MELLOW』で紹介した。それが今から20年前のこと。当時は否定的意見もあったが、ジェスをAORシンガー的に扱ったのは、多分アレが初めてだったろう。

ココに紹介するジェス・ローデン・バンドは、その1stソロのプロモーション・ツアーをキッカケに誕生したグループである。元々はジェスは、かつて組んでいたバッツ・バンドの同僚フィル・チェン(b)をはじめとするゴンザレス周辺人脈を使ってバンドを組もうと考えていたらしいが、彼らは英国きってのセッション・ミュージシャンでもあったため、スケジュールの問題で実現せず。そこで白羽の矢が立てたのが、ポリドールでアルバムを1枚出したあと契約を失ない、活動が宙に浮いていたイグアナという6人組ファンキー・ロック・バンドだった。ジェスをフロントに据えて、ジェス・ローデン・バンドとなった彼らは、ロキシー・ミュージックの前座などを経て、75年から制作を開始。翌76年秋にリリースされた合流後の1作目のアルバムが、今回紙ジャケットで再発された本作『KEEP YOUR HAT ON』である。

でも互いの相性が良かったか、コがはなかなかのホワイト・ソウル・アルバムで。時代的にAORと呼べる洗練度や洒落っ気には乏しいものの、熱気と哀愁が程良く混ざり合っている。ともすれば、ココモやゴンザレスのように職人肌になってしまうところを、ジェスのソウルフルなヴォーカルが表舞台に踏みとどまらせている感じ。アルバム・タイトルの元ネタと思しきランディ・ニューマンの<You Can Leave Your Hat On>、ドクター・ジョンの<Mama Roux>、ご存知イーグルスの名曲<Desperado>、そしてジェスの名唱が聴けるボビー・ブランドの<Too Far Gone>と4曲のカヴァーがあり、オリジナル曲とのバランスも良好。

演奏面では、フランジャー効果を持った動きのあるベースが特徴的だ。弾いているのはジョン・カートライトで、この人は後々ジャッキー・ホイットレンという女性シンガーとのデュオ:ホイットレン・カートライトでAORチックなアルバムを出している。ジェス・ローデン・バンドとしては、この後スタジオ・アルバムとライヴ盤を各1枚づつリリース。その後ジェスは再びソロへ転じ、2nd『THE PLAYER NOT THE GAME』を作るワケだ。