deliverance

前回ポストに続き、韓国 Big Pink 発の紙ジャケット国内仕様盤をピックアップ。このデリヴァランスは、独在住のカナダ人ファミリーを中心としたクリスチャン・ロック系グループ。76年にカナダのクリスチャン・レーベルからデビューし、この78年作『LASTING IMPRESSIONS』が3枚目のアルバムとなる。翌年のラスト・アルバム『TIGHTLOPE』は、拙著『AOR Light Mellow Remaster Plus』(01年)にも掲載。原書の『AOR Light Mellow』に掲載していないのは確か、激レアだったのとバンドの正体がよく分からなかったからだと記憶するが、今では周辺事情も明らかになった。彼らが4枚もアルバムを出していたことは、当時は掴みきれなかったよ。

カナダからデビューした若干AOR寄りの大物ポップ・ロック・シンガーというと、誰もがブライアン・アダムスを思い浮かべると思う。そのブライアンの後を追うべく、同じA&Mのカナダ・ブランチが発掘したのが、85年にデビューしたポール・ジャンツだ。日本でも確か3枚ほどアルバムが出ていた気がするが、そのポール・ジャンツの出身グループが、このデリヴァランスだった。実際はポール(kyd,vo)とケニー(vo)のジャンツ兄弟と、従兄弟ダニー・ジャンツ(vo)が中心になっており、ほぼ全曲をポールが提供。そのジャンツ・ファミリーを、本作では5人のメンバーが支えている。ユニークなのは、その8人中5人がヴォーカリストであること。つまりフォーマットとしては、ヴォーカル・グループをリズム隊が囲む構図で、そこが如何にも白人ゴスペル系グループらしい。

初期はもっとフォーキーな、正調クリスチャン・ミュージックを演っていた気がするが、USに進出した2作目からコンテンポラリー色を強め、ロックとポップスにジャズやソウル・エッセンスを加味した音楽性を提示。ホーン入りの楽曲では、何処かシカゴを思わせる作風を目指し始めた。

そしてこの78年の3作目では、一気にそれを強力推進。当時のUSチャートを席巻し始めた産業ロック勢を意識したような、力強いAOR系ポップ・ロックを聴かせる。スタイル的には斬新さこそないものの、78年にドイツ地盤のCCMグループがコレを作っていたこと自体が、ほとんどミラクル。グループ名をそのまま曲名に掲げたオープニング・チューンなんて、シカゴを通り越してアース・ウインド&ファイアーみたい。イヤ、それよりフュージョン色が濃い目だから、日本のスペクトラムっぽいかな? カナダ出身ということで、同郷のジノ・ヴァネリも少し入ってそうだ。

曲によってビー・ジーズ風のメロウネスを湛えたり、ロキシー・ミュージック風のグリッターなポップ・ファンクをキメてみたり、そうかと思えば重心の低いクロスオーヴァー・ファンクで迫ったり…。ちょっと方向性が定まってなくて、まとまりを欠く部分がないではないけれど、各曲ごとのクオリティは一様に高く、ウルサ型のAORファンなら面白く聴けるだろう。ゴスペル系ヴォーカル・グループらしからぬ凝ったサウンド・メイクが、このデリヴァランスの魅力だ。

『AOR Light Mellow Remaster Plus』に載せた後続作『TIGHTLOPE』も、同じ Big Pink でリイシューの予定があるらしいけど、その前にまず、ようやく入手可能になったコレを聴いておくべし。