jackson browne live

待望久しいジャクソン・ブラウンの本人監修デジタル・リマスター再発。その第1弾として、『LATE FOR THE SKY』と並んで代表作とされている77年のライヴ盤『RUNNING ON EMPTY(孤独なランナー)』が先月発売された。以前、日本のワーナー・ミュージックからジャクソンの一連のアサイラム期作品の紙ジャケ/リマスター化が発表されたことがあったが、敢え無く発売中止に。関係筋に事情を訊いたところ、どうやらジャクソン自身から「待った!」が掛かったらしく、本人が関わらない形の独自リマスターはまかりならん!、というコトだったらしい。それなら早く進めてよ、と思うが、すっかり忘れかけた頃にこうしてリマスター盤が届けられたのである。他のアルバムも順次登場するのかどうかは不明ながら、ハイレゾも聴けるハイブリッドMQA-CD方式で再発されたばかりの『LATE FOR THE SKY』より、正直 やはりジャクソン本人監修によるコチラのリマスターに食指が動いてしまうな。

あまり詳しくない方のために概要を書いておくと、このライヴ盤は、よくあるグレイテスト・ヒッツ的なライヴ・ステージをパッケージにしたものではなく、いわばツアー・ドキュメント。実際のショウでのパフォーマンスはもちろんのこと、リハーサルでの収録、楽屋やホテルの一室、ツアー・バスの車内での録音など、ある意味ロード・ムーヴィー的な作品になっている。だからメンバーの雑談やエンジン音なども、作品に盛り込まれているワケだ。

参加メンバーも、従来のツアー・バンドからデヴィッド・リンドレー(steel g.)だけを残し、代わりにザ・セクションの4人(ダニー・コーチマー、リー・スカラー、クレイグ・ダーギー、ラス・カンケル)とコーラス陣(ローズマリー・バトラー、ダグ・ヘイウッド)を迎えた特別編成。収録曲はすべて新曲で固められ、クーチ提供曲やダニー・オキーフのカヴァーなども入っている。<Love Needs A Heart>はジャクソンとローウェル・ジョージ、ヴァレリー・カーター3人の共作。古いブルース・チューン<Cocain>(クラプトンとは同名異曲)には、ジャクソンとグレン・フレイが歌詞の一部を書き足している。どうやらジャクソンが他人の楽曲を取り上げたのは、コレが初めてだったようだ。要するに、ライヴ盤とは名ばかり。実質はライヴ・ツアーを舞台にしたコンセプト・アルバムだった。

タイトル曲の疾走感とライヴ盤という先入観のためか、全体的に元気が良い作品というイメージがあるけれど、アルバムとしてののテーマは、「人は皆、人生という孤独なロードを走り続けるランナーだ」ということ。だから中身は内省的な作品なのだ。それだけに、メドレーで歌われたラスト2曲<The Load - Out>と<Stay>が感動的に響く。オリジナル・マスターには、きっと未使用テイクが山のように眠っていたはずだが、それをボーナス・トラックとして一切表に出さず ストレート・リイシューで済ませたことも、きっとジャクソンの意志だったに違いない。

デジタル・リマスターのビフォー/アフターは聴き比べていないけれど、音の立ち上がりは明らかに良くなっていて、臨場感が増した印象。デジパック・サイズの3面見開き紙ジャケット仕様に、アナログ盤に封入されていた8ページのカラー・ブックレットを復活させたあたりも、やはり本人監修ならではのコダワリと言える。

さて、次は一体何が来るのかな?