randy waldman_superheroes

半年以上も前に解説を書いたジャズ系CDが、今月末にようやく輸入盤国内仕様でリリースされる.。メイン・アクトは、ピアノ奏者だけでなく、映画音楽方面の作編曲家・指揮者としても知られるランディ・ウォルドマン。これまでのセッション・ワークも多彩で、21歳の時にフランク・シナトラのツアーに参加。80年頃はジョージ・ベンソンのバンドに抜擢され、最後はツアーの音楽監督を任せられた。バーブラ・ストライサンドとはもう30年の付き合いで、やはり今ではショウの音楽監督を務めている。80年代後半からリーダー作もポツポツと出しているが、2作目以降、ソロの時はオーセンティックなジャズ・ピアノにこだわっているのが特徴。超絶技巧ベーシスト:ブライアン・ブロンバーグとよく組んでいるのも、ジャズ方面では知られている。

おそらく5枚目に当たる今作は、スパイダーマン、バットマン、スーパーマンなど、世界に名だたる人気特撮ヒーローのテーマ曲をコンテンポラリーなジャズ・アレンジで聴かせる豪華プロジェクト。ランディは子供の頃から大のヒーロー好きで、それが嵩じてこんな作品を思いついたようだ。

ただし特撮ヒーローを看板にした企画ものではないので、参加ミュージシャンは超ゴージャス。ジョージ・ベンソン、ウィントン・マルサリス、テイク6、チック・コリア、スティーヴ・ガッド、アルトゥーロ・サンドヴァル、ランディ・ブレッカー、ティル・ブレナーなど、こちらも音楽界のスーパーヒーローズを一堂に集めている。オープニングの<スーパーマンのテーマ>では、マイケル・ブーブレやジョシュ・グローバン、オリヴィア・ニュートン・ジョンにジョン・トラヴォルタが声を聴かせる場面も。基本フォーマットは、ヴィニー・カリウタ(ds)、マイケル・オニール(g)、カリートス・デル・プエルト(b)、ラファエル・パディラ(perc)にランディのクインテット。オニールはベンソン・グループの元同僚、プエルトはキューバ出身の名バンド:イラケレのメンバーを父に持ち、クリス・ボッティ、スティーヴ・ルカサー、チック・コリア、スティーヴ・ガッド、クリスティナ・アギレラ、カマシ・ワシントン、それに綾戸智絵や渡辺香津美、松居慶子などと多彩な共演歴を持つ。パディラは元マイアミ・サウンド・マシーンで、今ではL.A.きっての売れっ子打楽器プレイヤーとのことだ。

そこに前述のゲスト陣が華々しいプレイを重ねるワケだが、丁々発止の超絶プレイを披露するのではなく、軽いタッチでゴキゲンなジャズを聴かせてくれるのがステキ。古き良きウエストコースト・ジャズの在り様を再現した、とでもいうのかな。とりわけサイコーなのは、<Mighty Mouse Theme>と<Six Million Dollar Man Theme(600万ドルの男)>の2曲で、ヴィニーとスティーヴ・ガッドのダブル・ドラムが楽しめること。これはまさに “夢の競演” でしょう。またテイク6のアカペラで幕を開ける<Spiderman Theme>にも要注目。カナザワが子供の頃に親しんだTV版バットマンのテーマが、半ば分解されてパーツとして組み込まれている<Batman Theme>も、思わず身を乗り出してしまうな。

素材といい、メンバーといい、タイトル通りの『スーパーヒーローズ』。ジャズ好きは聴き逃すべからず、だけど、テーマがテーマなので、もっと気楽にシャレっぽく楽しめます。