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色々と気になるライヴが集中している、この8月末〜9月頭。最近 時々連絡を取り合っているベースの川内啓史クンにお声掛けいただき、梶原順 with Fab Bond @高円寺 JIROKICHI にお邪魔してきた。Fab Bond は、シュアなベースで定評のある川内クン、ギターとチェロの両刀使い伊藤ハルトシ、今や山下達郎バンドでスッカリお馴染みのドラマー:小笠原拓海によるインスト・トリオ。今月初めに、シンガー・ソングライター星野裕矢クンのライヴ・サポートをしている彼ら(その時のレポートはこちらから)を観たばかりだが、今度は、星野くんのライヴにも遊びに来ていた梶原さんと共演すると知り…、という流れ。しかも、かのJ&B時代の曲をたっぷり演る、と聞かされて、これは見逃せないゾ!と。

J&Bは、梶原さんと故・浅野ブッチャー祥之という往年の角松敏生バンドのギター・コンビ2人が結成した4人組で、リズム隊は松原秀樹(b)、沼澤尚(ds)という、いずれも当時の角松に縁深い面々。梶原・ブッチャー両氏の間では、前々から「いつか一緒に…」という話が出ていたそうだが、ある時ブッチャー側から「そろそろ動かないと、一緒にできなくなっちゃう」と真顔で誘いを受け、ちょうど20年前の99年8月に、このJIROKICHIでファースト・ライヴを開いたという。ブッチャーさんが時間制限を設けたのは、「99年7月にこの世が終わってしまう」と言われていたから(ノストラダムスの大予言)。それを真顔で言うあたり、実にブッチャーさんらしい。でも実際はスケジュールの都合などで、ブッキングはその翌月。07年のブッチャーさん逝去までに3枚のアルバムを出し、そのほかに “JとB” 名義のアコースティック・アルバムなどもある。当時はよくアドリブ誌などで取材させてもらったし、Blues Alleyや今はなき渋谷AXでのライヴも観に行ってた。

でもって Fab Bond の3人は、実は洗足音楽大学ジャズ科の同級生で、その講師が梶原さん。つまりは両者は師弟関係にあるワケで、川内クンなどは「梶原さんが教えていたので洗足を選んだ」なんて話も。その後小笠原クンが達郎バンドに抜擢されたり、同級生の市原ひかりチャン(ジャズ・トランペット)がソロ・デビューした頃から洗足卒業生のミュージシャンが芋づる式にシーンで活躍するようになって。Fab Bondの後輩ミュージシャンに「いつ頃からそうなったの?」と訊くと、「もしかして梶原さんが原因かも…」なんてことも聞いていた。

一方で梶原さんも、以前から川内クンとは時々ライヴを演っている。でも Fab Bond を丸抱えしてのステージは、多分今回初めて(前日には三島でライヴがあった)。それでも「Fab Bond はJ&Bのことをよく分かっていて、それを引き継いでくれてる」と高く評価している。もちろん教え子であることも大きいだろうけど、時々メンバーの顔を見て、「そうくるか」とばかりにニヤリと微笑んでいた梶原さん、本当に嬉しそうだったな

ステージは急逝した大村憲司の未発表曲で J&Bが世に出した<Leaving Home>に始まり、前半は<加飯酒>、<速いやつ>、<Nowadays>、プリンス・カヴァーの<Pink Cashmere>など、J&B時代のレパートリーばかりで固められた。伊藤クンがソロの途中で弦を切ったり、ラストの<Song For J&B>でこの曲のギター・プレイのキモとなる梶原さんのワウが壊れる、なんて珍しいアクシデントが重なったが、これは「きっと浅野さんがイタズラしているんだろう」と、みんな納得していた。カナザワ的には懐かしい曲もいっぱいで、思わず身を乗り出したりして。秀樹&タカの骨太なボトムに比べると、川内&小笠原のグルーヴは柔軟でしなやか。そこに乗るギター陣の掛け合いはエネルギッシュでスゴかったが、何度か観ている伊藤くんがココまで弾き倒すのに遭遇したことはなく、それはやはり梶原さんに触発されたからだろう。普段は割とクールに知的なフレーズで攻めるタイプの梶原さんも、門下生に煽られて熱く応酬した感があった。

2ndセットはまず、レコーディングを終えたばかりと言う梶原さんのアコースティック・アルバムからの新曲2曲をエレクトリック・ヴァージョンで。コレはかなり表情が変わったそうで、オリジナルを聴くのが楽しみ。その後は Fab Bond の2枚の自主制作アルバムから、<3 of Us>や<Journey>、<Tata Shufle>、そしてレコーディングには梶原さんも参加していた<Gift>などを。この<Gift>は元々、川内クンがブッチャーさんをイメージして書いたそうだ。また<Tata Shufle>のMCでは梶原さんが、「最近はシャッフル系の曲が少ないよね」と話していたが、コレにはカナザワも激しく同意。現に自分がプロデュースしているSparkling☆Cherryには「シャッフルの曲作れ〜」と言っていたほどで、この曲がドラムの小笠原クン作曲というのも、何だか分かる気がした。

ブッチャーさん亡き今となっては、J&Bの復活はありえない話だろう。しかし梶原+Fab Bond なら編成も同じうえ、スピリットもシッカリ共有できる。MCでは何だか講義みたいな場面にも遭遇して、メンバーもオーディエンスも思わず苦笑したりとか… それと同時に昨今は、ムード先行のスムーズ・ジャズとかオーヴァー・プロデュース気味のフュージョン・グループばかりが増えていて、こういう70'sスタイルの大らかなバンド・アンサンブルを聴かせるインスト・ライヴがメッキリ少なくなった。両者それぞれの活動に期待しているのは言わずもがなだけど、できればこのジョイントも定期的に演ってほしいものである。

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