lesley duncan_gm

先日ポストしたエルトン・ジョンの自伝的ミュージカル映画『ROCKETMAN』を見ていて、ポップス史に残る名ソングライター・コンビであるエルトンとバーニー・トーピンの精神的絆の強さを実感した人は多いと思う。でもその時、ふと脳裏をかすめたのは、この女性シンガー・ソングライター:レズリー・ダンカンのことだった。エルトンの3作目『TUMBLEWEED CONNECTION』(70年)に収録された<Love Song>が、彼女の楽曲だったからである。エルトンが外部ライターの曲を取り上げた例はごく少なく、しかもコレが初めてのことだった。

レズリー初のソロ・アルバムは71年の『SING CHILDREN SING』。でも実のところ、デビュー自体は63年とかなり早く、パーロフォン、マーキュリー、RCAを渡り歩きながら、7〜8枚のシングル盤を出している。並行して60年代後半〜70年代初めはスタジオ・セッション・シンガーとして働いていて、ドノヴァンやダスティ・スプリングフィールド、アンドリュー・ロイド・ウェバーのロック・ミュージカル『Jesus Christ Superstar』のアルバムなどに参加。この時期はエルトンもまだスタジオ・セッションに駆り出されていた時期だから、どこかで両人の接点があったのかもしれない。歴史的名曲<Your Song>を含むエルトン 70年発表の2作目『ELTON JOHN(僕の歌は君の歌)』(70年)にコーラスで参加した後、前述の『TUMBLEWEED CONNECTION』で彼女が楽曲提供.アコースティック・ギターで参加となった。この<Love Song>は元々、レズリーが69年に発表したシングルのB面曲。それをエルトンが取り上げて彼女がアルバム・デビューのチャンスを掴み、その初アルバムにはエルトンがゲスト参加している。その後もレズリーはサントラ盤『FRIENDS』、『MADMAN ACROSS THE WATER』にクレジット。もっとも有名なスタジオ・ワークは、ピンク・フロイド『DARK SIDE OF THE MOON(狂気)』やアラン・パーソンズ・プロジェクト『EVE』あたりになるだろう。

このアルバムは、レズリーが74年から在籍したレーベル:GMでの3枚のアルバム、『EVERYTHING CHANGES』『MOON BATHING』『MAYBE IT'S LOST』を復刻し、それぞれに未発表音源を追加収録した3枚組。GM音源は復刻が遅れに遅れていて、世界的にはコレがレズリーGM期の初CD化になる。ただし日本では Celeste がひと足先に丁寧なCDリイシューを進め、それぞれが単独で復刻済み(『MOON BATHING』とか『MAYBE IT'S LOST』とか)。未発表音源も『LOVE SONGS: Previously Unreleased 1977-86』という編集盤にまとめていて、昨年ひっそりと発売している。きっとそんな動きが英RPMの目につき、この3枚組に繋がったのではないか。

でも、この編集盤と今回のボーナス・トラックがすべて同じかというと、そうでもないのがミソ。Disc 1 -『EVERYTHING CHANGES』のボーナスは今回新たに発掘されたらしいBBC所蔵のライヴ音源7曲で、Disc 2 -『MOON BATHING』のボーナスはアルバム未収シングルに73年レディング・フェスティヴァル出演時のライヴ音源1曲。いずれも編集盤では聴くことができない。反対にDisc 3 -『MAYBE IT'S LOST』の追加トラック11曲は、オリジナル・アルバムが出なくなった後にレコーディングされた音源。クレジットでは初出5曲とあるが、いずれも編集盤に入っている。でも編集盤でしか聴けない曲もいくつかあるので、レズリー・ファンには悩ましいところ。それでもこうして彼女のような知る人ぞ知るシンガー・ソングライターの作品がフィジカルですべて揃えられるのは、もやは奇跡に等しい。しかも『MOON BATHING』あたりは、クリス・スペディング(g)やゴンザレスのメンバーも参加した英国産プレAORの趣き。気になる人は、あるうちに買うときやぁ〜!