rick springfield_orchestra

エディ・マネーの訃報を聞き、そこにリック・スプリングフィールドがコメントを寄せているのを見て、彼の現役バリバリのライヴ・パフォーマンスを思い出していた。この春にひっそり出ていたニュー・アルバムは、やたらと落ち着いたイメージを醸し出していて、オーケストラとの企画モノとはいえ「あのアグレッシヴな男も、70歳ともなれば こんなに分別臭くなってしまうのか…」と、ちょっぴり残念に思っていたのだ。ところが実際に聴いてみたら、何だ 全然ヤンチャぢゃないの〜

内容的には、タイトル通りの with オーケストラもののセルフ・カヴァー集。…となれば、普通はビッグ・バンドやシンフォニックなアレンジで、ちょっと高尚に畏まった作品になる。歳を重ねてもちょい悪オヤジを気取っているリックが(もちろんそれがバッチリ似合っている)、ノー・タイとはいえスーツ姿でグランド・ピアノの前に座っているのだから、そりゃあ〜それなりに正調なアルバムだと思うだろう。

現にオープナーの<Kristina>は、重厚なオーケストラが頭2分近くも荘厳に鳴り響き、こりゃー聴き通すのがシンドイかも…、なんて。ところがギターがリフを刻み始め、リズム隊がインしてくると、急に空気が変わってくる。そう、完全にリックならではのポップ・ロック。コケそうになるのをこらえながら、こりゃ誤解を生むよなぁ…と苦笑した。

確かにオーケストラとの共演作だが、だからと言ってジャズやクラシック・アレンジに向かうのではなく、基本は何時ものバンド・サウンド。でもセルフ・カヴァーとなれば、ただちょっとアレンジを変えてのリメイクでは芸がない。そこでバンド・フォーマットでもキーボードやシンセ類はなるべく使わず、それをオーケストラに置き換えた。そのうえで大編成の特徴を生かすべく、交響楽的でスケール感が膨らむ編曲を施した、という印象。如何にもオーケストラっぽく聴こえるのは、先の<Kristina>と<State Of The Heart>、ラストの<April 24.1981 / My Father's Chair>ぐらいだろうか。

だったらこのタイトル、このアートワークはないだろう、というのが正直なところ。リックのカッコ良さは相変わらずだが、全編シンフォニック・アルバムだと早合点されたら、熱心なファン以外はどうしたって及び腰になる。どうやら両親に捧げた作品でもあるらしいが、ベテランの場合はイメージ戦略を間違えると、特定ファンしかついて来なくなる可能性が高まるのだ。例えばジャケがコレでもタイトルを変えるとか、何らかの方法があったはず。

内容はシッカリしているだけに、往年のリックを知る人は、イメージに惑わされずに聴いてほしいと思う。

1. Kristina
2. I've Done Everything for You
3. Don't Talk to Strangers
4. Jessie's Girl
5. Affair of the Heart
6. Love Somebody
7. Human Touch
8. Celebrate Youth
9. World Starts Turning
10. State of the Heart
11. Irreplaceable
12. April 24.1981 / My Father's Chair