fat chance

片や、AORレジェンドの一人に数えられるビル・ラバウンティ。片や、カーペンターズが77年に全米トップ40入りさせた<All You Get From Love Is A Love Song(ふたりのラヴ・ソング)>を筆頭にライチャス・ブラザーズやアート・ガーファンクル、グレン・キャンベル、キャプテン&テニールらに楽曲を取り上げられたスティーヴ・イートン。その2人を輩出したアイダホの6人組:ファット・チャンスの、72年のワン&オンリー作『FAT CHANCE』が、韓国 Big Pink で紙ジャケット再発され、その国内仕様盤が発売された。

サウンド的には、時代背景もあるのだろう、2人のシンガー・ソングライターを中心にしたグループというよりも、在籍するホーン・セクション2人をフィーチャーしたシカゴやブラッド・スウェット&ティアーズ風のブラス・ロック。そこにカントリー寄りやスワンプ・ロックっぽいナンバーを加え、多彩さを演出している。だからビルやスティーヴそれぞれのソロ作の指向からは少々距離があるのだが、それぞれのルーツの一端を垣間見るようで なかなか興味深い。

収録曲はビルが4曲、スティーヴが3曲を書き下ろし、2人を含むメンバー共作が2曲。面白いのは、セッションにアディショナル・メンバー的に参加していると思われるレッキング・クルーのギタリスト:マイク・ディージー、クリセイダーズで名を上げるベースのマックス・ベネットが、各1曲づつ楽曲提供していること。他にもラリー・ネクテル(ニスト)、デヴィッド・ケンパー(ds)、ゲイリー・コールマン(perc)に、クライディ・キング/ヴェネッタ・フィールズ/リタ・ジーン・ボーディーン(cho)など、名のあるセッション・ミュージシャンが参加して華を添える。プロデュースは当時のヘレン・レディを手掛けていたジェイ・センター。ファット・チャンス自体はすぐに解散してしまうが、彼がビルやスティーヴのソロ作でも手腕を発揮していたということは、メンバーたちはそれなりに納得して世に出したアルバムだったのだろう。

若ハゲの学生みたいなルックスのビルが、ちょっとハスキーな声でシャウト気味に歌うあたりは、この後のソロ活動では聴けないこと。AORではないけれど、若かりし日のビルやスティーヴを知るには格好の作品だ。