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ビートルズ『ABBEY ROAD』に続いて、今日もデラックス・エディションのご紹介。…といってもコチラは今月末のリリースを先取りして。お題はカナザワが大好きで、ベスト盤のライナーを書いたこともある、地味ながらも滋味溢れる英国産AORアーティスト:クリス・レア。80年代後半〜90年代初頭に出した7作目『SHAMROCK DIARIES』からの計5作『ON THE BEACH』、『DANCING WITH STRANGERS』、『THE ROAD TO HELL』、『AUBERGE』が、すべての2枚組デラックス・エディションで再発されるのだ。そのうち、人気作にして日本での出世作でもある86年作『ON THE BEACH』が国内発売されることになり、その音源をひと足早く聴くことができた。

クリス・レアは78年に<Fool (If You Think It's Over)>(全米12位)でデビューした、アイルランド系英国人のシンガー・ソングライター。ザラザラしたハスキー・ヴォイスとブルースに根ざしたスライド・ギターがトレードマークで、特に英欧で絶大な人気を持つ。ガス・ダッジョンのプロデュースで登場したことから、当初はよくエルトン・ジョンの後継と見なされていた。日本ではなかなか陽の目を見なかったが、『ON THE BEACH』リリースから間もなく、タイトル曲がクルマのCMに使われてヒット。ようやく認知されるようになった。

彼のようなアーティストをAORというと、TOTO / エアプレイ派は違和感を抱くかもしれない。でもエリック・クラプトンのアダルト・コンテンポラリーな部分を集めたようなニュアンスがあって、無闇に洒脱に走らないところが、逆に苦み走った男のダンディスムを漂わせる。人気曲<On The Beach>にしたって、能天気なサマー・アンセムではなく、ひとりで夏の甘い思い出に耽っているような哀愁に溢れた楽曲。真っ青な空を映したジャケットも、盛夏のそれではなく、ちょっと抜けたような秋の色で、置き去りにされたビーチ・パラソルがポツンと立っている風情。きっと近くに寄って見たら、砂だらけでサビが出てたりするんだよ、きっと… でもそういうロンリーな雰囲気が似合う人なのだ、クリス・レアって人は。

今回すごく久しぶりにアルバムを通して聴いたけれど、改めてクリスは、英国産AORの代表格だと確信した。インパクトのある曲は少ないものの、 <On The Beach>一曲ではなく、<Giverny>とか<It's All Gone>、<Two Roads>といったAORテイスト豊富な楽曲がいくつも。あまり話題にならないけれど、一時はジェフ・ベックの片腕となったkyd奏者マックス・ミドルトン、ゴンザレス出身のギタリスト:ロバート・アーワイ(共にハミングバード出身)が長くバックを務めている、というと、興味を持つ人がいるかな?

所属していたマグネット・レーベルの配給が変わったりして、CD再発は初めではないけれど、本格的なリマスターはコレが初めて。しかもディスク2は、オリジナル・アルバム未収のB面曲や未発表ヴァージョン、ライヴ・パフォーマンスなどの大盤振る舞い。<On The Beach>にこんなリミックスがあるとは思わなかったし、シングルB面ではかなり冒険していたことも分かった。隠れた名X'Masソング<Driving Home For Christmas>は、ゆったりテンポのオリジナル86年ヴァージョンでの収録。コレも今となっては珍しいかもしれない。

CD不況の折、国内リリースは人気作『ON THE BEACH』のみとなったけれど、クリス好きは是非とも5枚全部を揃えるべし(現時点ではアホな amazon jp にはアップされていないが、TOWERやHMVでは購入可)。この頃の作品から、死の淵に立つ大病を患う前の00年作『KING OF THE BEACH』までは、必ず名曲が潜んでいるのだから。

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