wax live

英米のポップ・マエストロ、10ccのグレアム・グールドマンと、リンダ・ロンシュタットを支えた米西海岸系のアンドリュー・ゴールドによるツー・メン・ユニット、ワックス。80年代後半の数年間、コモン・ノーレッジと名乗った前身時代を含めても6〜7年に満たない短命ユニットだったが、玄人筋やマニアからの評価は一様に高く、ヒットらしいヒットが全米43位の<Right Beteween The Eyes>だけというのが信じられないほど。活動中に発表したアルバムも、わずか3枚。その後グレアムの10cc 復活やアンドリューのブリンドル再結成(カーラ・ボノフにウェンディ・ウォルドマンも!)を挟み、97年にも新曲+未発表曲(前身コモン・ノーレッジ時代の未発表曲を含む)から成る編集盤的4作目が出ている。でもそれから20余年、アンドリュー急死から8年も経って、こんなライヴ音源/映像が発掘されるとは

しかもこの発掘ライヴ3枚組は、最近乱発されているブートレグまがいのハーフ・オフィシャル・ライヴ音源(主にラジオ用)ではなく、英 Esoteric / Cherry Red 発のホンマもの。グレアムへの謝辞もシッカリ記載されている。

ライヴ3枚組の中身はCD2枚+DVD。CD音源全20曲に対し、何故かライヴ映像は6曲のみ。収録は、彼らの2nd『AMERICAN ENGLISH』発表時の英国ツアーから、87年11月27日ハロゲイトでのショウにて。映像が6曲分なのは、どうやら何かのオンエア用に予め編集されていたから、らしい。

打ち込み全盛期のライヴなので、この音数を5人だけで再現。シンセのみならず、同期を走らせてサンプリングやシーケンサーを駆使している。10cc時代からギターとベースを弾き分けていたグレアムはそのままながら、ギターを弾きながら歌うイメージの強いアンドリューは、鍵盤に専念。ギター、ドラム、キーボードの3人がバックに付いているが、そのうちギターは後期10ccに参加し、今も再編メンバーに名を連ねるリック・フェン(ニック・メイスンとの共演盤アリ)だ。彼、ココではサックスまでプレイしていて、意外に芸達者なのね。

演っているのは、当然ワックスでの2作からだが、その中にグレアムの10cc結成以前の出世曲<Bus Stop>(ホリーズ)や<For Your Love>(ヤードバーズ)も。10ccからは<Dreadrock Holliday>を歌っている。もちろんアンドリューもソロ・ヒット<Lonely Boy>のほか、『ALL THIS AND HEAVEN TOO(幸福を売る男)』から<Never Let Her Slip Away(彼女に首ったけ)>と<Thank You For Being A Friend(気の合う二人)>を披露。ことワックスには、どの10ccの有名曲より相性が良いようだ。

87年のライヴなので、いま聴けば、確かに80年代のテクノロジーにまみれたサウンドではある。でも、それに引き摺られたにせよ、この時期ならではの指向性で2人のポップ・サイドが強調された側面もあり…。そもそもグレアムもアンドリューも揃ってビートルズ・フリーク。だからラストが<Slow Down>なのも嬉しいな。それを考えるとグレアムのかつての相方エリック・スチュアートは、せっかく同時期に本家ポール・マッカートニーと組んだのに(PRESS TO PLAY / 86年)、今ひとつパッとしなかった。

ちなみにこの3枚組、日本では何故か国内仕様盤が2本の流通で出ていて、値段設定が1000円違う。この際そんなクソには乗らず、2000円以上も安い輸入盤をゲットしませう