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ビッシュことスティーヴン・ビショップの 2019年最新作が到着。自主制作でポロポロポロッとイージーにアルバムを出しちゃう人なので、リリース情報がネットに上がってきた時も、唐突で驚いたというより、またか…という感覚。そして、 自分の70年代のアーティスト写真をトリミングしただけの、大した工夫もないジャケットを見て、「あぁ、やっぱり…」と思ってしまった。それでも大々々好きなシンガー・ソングライターだから、実際にアルバムを聴くまでの間、少しづつ気持ちが膨らんでしまって… 十中八九裏切られると分かっていながら、それでも「ヒョッとして…」なんて淡い期待も。そしてその日がやってきた。

……まぁ、大方は事前に予測した通り。簡単に言えば、粗製乱造。ピアノやギターに打ち込みドラムという、よく言えばシンプル、悪く言えばいたってチープなプロダクツである。それでもビッシュの楽曲自体はどれも一定水準をキープし続けているから 作品として立派に成立しているし、ファンなら十分に納得できるだろう。自分も長年ビッシュのメロディに涙させられてきたヒトだからして、自ずと点数は甘くなる。でもその楽曲をどのようにアレンジし、どのようにスウィートニングしてリスナーに届けるのか。彼はそこが、いつもテキトーなのだ。ダイアモンドの原石を、ロクに磨かないまま、「ほ〜らヨ」とばかりに放ってよこす。もったいないこと極まりない。

以前、3枚一気にリリースした自主制作のデモ集も、玉石混交もイイところだった。アイディアの断片を記録しただけの弾き語り音源から、ちゃんとレコーディングしたのにアルバム未収に終わってしまったオフィシャル級の未発表トラックまでがゴチャ混ぜで…。そこで あるレーベルを通して、この3枚からイイ曲を選りすぐって1枚のCDにまとめ、日本でリリースしたい、とビッシュ側に打診してもらったことがある。残念ながら彼は興味を示さなかったが、せっかくのお宝をゴミと一緒にして失くしてしまう、そういうタイプの人なのだ、ビッシュは。

10年代になって出したスタジオ盤『BE HERE THERE』や『BLUEPRINT』もほぼ同じ仕様。でも今作がそれより良さげな印象を持ったのは、ジミー・ウェッブがアート・ガーファンクルに提供した<Someone Else>や、ペギー・リーのジャジーなカヴァー<I Don't Know Enough About You>などが入っているからか。Unreleased とされる<French Postcards>には、実はデビュー間もない頃に書かれたという説あり…。トッド・ラングレンに通じるポップ・チューンや人を喰ったようなパーティ・ソングもあって、多彩感が増している。なればこそ、ロー・バジェットでももう少し他のやり方があったはず。変人との噂が絶えないビッシュゆえ、誰も彼に意見できないのかもしれないが、やはり彼には強い気持ちでダメ出しできる優秀なプロデューサーが必要。素材は相変わらず良質なだけに、本当ならもっと良いポジションにいて然るべき才人だと思うな。