mike stern_jeff lorber

年に2〜3度 定期的に会っている業界関係者と、情報交換会と称した定例飲み会。しかも前日と同じエリア。2日連続で都内に電車で出かけて飲むなんて超珍しいけど、その分 日中はシッカリ仕事。で、聴いているのは、予定日を2週間以上も過ぎてようやく海外から到着したマイク・スターンとジェフ・ローバーのコラボ・アルバム『ELEVEN』。日本盤が出るのはなるべくそちらを買うようにしているカナザワながら、リリース・タイミングが遅かったり、ボーナスがないとかライナーがないとか、価格差ほどの価値がないなら輸入盤を選ぶ。ただ最近は税関の安全対策の関係か、米国発送のモノはやたら時間が掛かる。今回はまさにそのパターンだった。

ジェフ・ローバーにスムーズ・ジャズ的イメージを抱く方は多いと思うが、プロデューサーとしても有能な人だけに、いくつかのスタイルを微妙にクロスさせながら上手く使い分けている。10年代にジェフ・ローバー・フュージョンを復活させた時は、これからは鍵盤奏者としての自分をプッシュするのだな、と予感させると同時に、時節柄、スムーズ・ジャズを横目に見ながらコンテンポラリー・ジャズ寄りの道を行くのだろうと思わせた。それから程なくして、サックスのエヴァレット・ハープ、ギターのチャック・ローブ(17年没)と “ジャズ・ファンク・ソウル” という、まんまな名前のユニットを立ち上げ、これまで3枚、スムーズ・ジャズどっぷりなアルバムをリリースしている(ローブの後任ギターはポール・ジャクソンJr.)。

それもあってか、ジェフ・ローバー・フュージョンの方では、バリバリの硬派フュージョン・ギタリスト:マイク・スターンとチームアップ。ひと口に “フュージョン” とか “クロスオーヴァー” とカテゴライズされても、個々の実際の音楽スタイルにはかなり違いがあるワケで、ジェフとマイクも従来パターンなら相見えることなどなかったかもしれない。そこを繋いだのは、30年在籍したイエロージャケッツを離れて再編ジェフ・ローバー・フュージョンに参加した、サウスポーのベース奏者ジミー・ハスリップだ。イエロージャケッツは08年作『LIFECYCLE』でマイクをゲストに招いて濃厚共演、その後も長期に渡って一緒にツアーを行なっていた。ジャケにはジミーの姿が見えないものの、アルバムはジェフとジミーの共同プロデュース。マテリアルはマイクとジェフが均等に持ち寄り、そのうちジェフの2曲でジミーが共作している。ジェフがベースをプレイしたトラックもあるが、前2作に参加してきたサックスのアンディ・スニッツァーが不参加の代わりに、デヴィッド・マンがワン・ホーンで。おそらく正規メンバーのサックスが不在となった時点で、ジミーが「マイクを呼んでみたら…?」と提案したのではないか。

テレキャスター・スタイルのヤマハ製シグネイチャー・モデルで、極端にサスティーンを効かせたロック・フュージョン・ギターを弾き倒すマイク。そのスタイルはワン&オンリーで、誰と組もうとプレイが変わることはない。だから必然的に、ジェフのジャズ・サイドが浮き彫りになってくる。でも近年のUSスムーズ・ジャズ・シーンは完全に硬直化しているそうだから、きっとコレはジェフやジミーの狙いでもあるのだろう。逆にマイクがジェフに忖度したか、彼のコンポーズの方に甘めの楽曲があったりして…。ドラムにはヴィニー・カリウタ、デイヴ・ウェックル、ゲイリー・ノヴァックと、こちらのキャスティングにもリキが入っている。<Ha Ha Hotel>は何だかブレッカー・ブラザーズみたいだな

ちなみにタイトル『ELEVEN』の出所が不明なのだが(JLF名義では12枚目)、日本盤ボーナス曲として11曲目に収録されているのが<Eleven>なる楽曲。自分がオーダー入れた時、まだ日本盤情報はアップされてなかったはずなので、そこにボーナス曲が入るとは…。