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決して有名ではないが、ある筋では知られている職人ミュージシャンが、また鬼籍に入ってしまった。マイケル・シャーウッド。TOTOのデヴィッド・ペイチ&スティーヴ・ポーカロのプロデュースで85年にデビューした、ロジック(Lodgic)の元リーダー兼シンガー/キーボード奏者。そのバンド・メイトで現在はイエスのメンバーとして活躍する弟ビリー・シャーウッド(b,vo)が、5日、自身のfacebookで兄の悲報を伝えた。享年60歳。現時点で死因は明らかにされていない。

マイケル&ビリー・シャーウッドの父親は、ジャズ・ミュージシャンとして知られるボビー・シャーウッド。ビング・クロスビーのギタリストとして活躍したほか、自分のオーケストラを率いたり、ラジオ・ホストとしても人気を得たいた人である。マイケル自身はラス・ヴェガス生まれで、4歳からピアノを弾いていたそうだ。

77年にギタリストのジミー・ハーンとロジックを結成。最初はフランク・ザッパやイエス、ピーター・フランプトンらのカヴァーを演っていたとか。その後、弟ビリーが加入し、80年代初頭にL.A.へ進出。ジェフ・ポーカロを通じてTOTOのメンバーと懇意になったらしい。特にマイケルはスティーヴ・ポーカロとウマがあったらしく、一緒に曲作りを開始。そのうちの1曲<For All Time>はマイケル・ジャクソン『THRILLER』に提供されたものの採用されず、25周年記念特別盤『THLILLER 25』に未発表ボーナス・トラックとして収録されている。

ロジックとしてのデビューは、前述通りの85年。当初はデヴイッド・ペイチとデヴィッド・フォスターが共同プロデュースする予定だった。でもそれがスケジュールの都合でペイチとスティーヴ・ポーカロ、ジェイムス・ニュートン・ハワードに代わり、最終的にはニュートン・ハワードが離れて、エンジニアのトム・ノックスが制作に名を連ねている。ペイチはA&Mとの契約にも手を貸す一方、TOTOの『FEHRENHEIT』(86年)にはマイケル・シャーウッドがバック・ヴォーカルで参加した。

しかもこのロジックのデビュー作『NOMADIC SANDS』が、なかなかの出来で。時節柄もあって、イエス『90125』やMr.ミスター『WELCOME TO REAL WORLD』に比較できるクオリティで、畳み掛けるようなアレンジが秀逸。シングル・ヒットが出ずコレ1作で解散するが、メンバー同士の絆は固かったようで、元メンバーの4人(シャーウッド兄弟とハーン、もう一人の鍵盤奏者ガイ・アリソン)に TOTOジョセフ・ウィリアムスの兄マーク・T・ウィリアムス(ds)が加わって、エア・サプライのサポートを行なうようになる。更にビリーとガイ、マーク・Tの3人は、マクサスのオリジナル・ギタリスト:ブルース・ガウディと組んでワールド・トレイドなるメロディック・ロック系バンドを立ち上げたが、マイケルはコレには参加しなかった。

90年代になると、シャーウッド兄弟揃ってイエスの『UNION(結晶)』に参加。ビリーはこれ以後、断続的にイエスのサポートに呼ばれることになり、その中核クリス・スクワイアー没後は正式メンバーに迎えられる。一方マイケルはセッション活動に勤しみ、リサ・ローブのアルバムなどに参加する傍ら、リーダー作『TANGLETOWN』を発表。これはbandcampで試聴できる。最近は再びTOTO周辺で活躍し、16年に発表されたスティーヴ・ポーカロの初ソロ・アルバム『SOMEDAY / SOMEHOW』で彼のパートナーを務める大活躍。ほとんどの曲で共作者としてクレジットされ、リード・ヴォーカル(1曲)とバック・ヴォーカルを担当している。また『TOTO XIV(聖剣の絆)』でも、ペイチと<Chinatown>を、スティーヴ・ポーカロと<Bend>(日本盤ボーナス・トラック)を共作しており、TOTOファンには忘れがたい存在となった。

きっと今頃は雲上セッションで、ジェフやマイク・ポーカロに呼ばれ、「せっかくコッチへ来たんだから、1曲歌え〜」なんて言われているのかも。

Rest In Peace...

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