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老いてますます好調な、リンゴ・スターの約2年ぶり、20作目のスタジオ新作。最近の彼のアルバムは、どれもリラックスした中にシッカリ中身の詰まった楽曲が盛り込まれ、素直に楽しめる作りになっていた。でもこの新作『WHAT'S MY NAME』は、その延長線上にありながら、何処か表情が違っている気がする。楽しいだけじゃない、本気で演ってんだヨ と言わんばかりの作風なのだ。

ご存知のようにリンゴは、豪華メンバーを集めたオール・スター・バンドを率いて、今も世界中をツアーしている。3月に来日した時の顔ぶれは、スティーヴ・ルカサー(g)、グレッグ・ローリー(kyd)、グレッグ・ビソネット(ds)、ウォーレン・ハム(sax)に、復帰組であるヘイミッシュ・スチュワート(b,g)、コリン・ヘイ(b /元メン・アット・ワーク)の6人。でもそこからアルバム制作に起用されているのは、実質的バン・マスであるルカサーと実務派ハム、自作提供曲にだけ参加のコリン・ヘイのみだ。

各楽曲で制作面のイニシアチヴを握るのは、ルカサーと、元オール・スターズ・メンバーでリンゴの義弟でもあるジョー・ウォルシュ、ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートらリンゴの近作で腕を振るっていた人たち。ベンモント・テンチやネイザン・イースト、エドガー・ウィンター、ジム・コックスやゲイリー・バー、ゲイリー・ニコルソンなども、前作から連続参加している。それこそ新顔らしい新顔は、ワン・ ダイレクションやケイティ・ペリーなどヒット曲を連発し、ココではリンゴと2曲共作しているサム・ホランダーが目立つくらい。前作『GIVE MORE LOVE』もゴキゲンなアルバムだったが、今回はそれに輪を掛けて攻めの姿勢が目立っている。初期ビートルズのレパートリーだった<Money>を再度カヴァーし、ロボ声のエフェクトを掛けてヴォーカルを取っている辺り、なんだかとても嬉しくなった。リンゴ、なかなかイケてるぢゃん

事前の話題曲は、ジョンの遺作<Grow Old With Me>をリメイクしたこと。しかもそこにポールがベース&コーラスで参加し、ジョー・ウォルシュも加わって大きな華を添えている。でもアルバム全体を見ると、ぶっちゃけ それがどうでもよくなってしまうほど、見事なロック・アルバムに仕上がった。リンギとルカサーの共作<Magic>なんて、TOTOが突然ゆる〜く下手クソになった感じで、思わず笑ってしまう。もちろんスキル云々じゃないんだけど。

70年代の傑作『RINGO』や『GOODNIGHT VIENNA』には到底敵わないけれど、近年の作品ではおそらく一番の出来。能天気で楽しいだけじゃない、ちょっと真面目なリンゴの一面。胸のジョンのバッジは伊達ではないようで…。