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先月上旬に日本でもリイシューされたクリス・レアの代表作『ON THE BEACH - Deluxe Edtison)』は、早々にこちらのポストで紹介して、予想以上の反響を頂戴した。“そっかー、クリス・レアには意外に隠れファンが多いのだな” と実感したが、まぁ、日本での人気を決定づけたアルバムだから、それも当たり前といえば当たり前のコト。実は海外では同時発売されながら、日本ではリイシューが見送られてしまった 他4作品の各デラックス盤『SHAMROCK DIARIES』(85年)、『DANCING WITH STRANGERS』(87年)、『THE ROAD TO HELL』(89年)、『AUBERGE』(91年)の動きでこそ、彼の真のファンの指向性が掴めるような気がしている。その『ON THE BEACH』以外のデラックス盤4枚を、ココで新ためて紹介しよう。

『SHAMROCK DIARIES』(85年)は、27歳で比較遅いデビューを飾ったクリス・レアの、通算7枚目のアルバム。初めて英国トップ20入りしたブレイク・ポイントになった作でもあった。当時の日本盤は『クローバー』という邦題だったが、本来の “シャムロック” とは シロツメクサやカタバミなど葉が3枚に分かれている草の総称で、クリスの祖先の国であるアイルランドでは国花に指定されている。またキリスト教では、三位一体論(自分、キリスト、精霊)のシンボルに使われ、なかなかスピリチュアルな意味を持つそうだ。"On The Beach" とタイトルしながら決して明るい曲にしないクリスの実直さが、ココに現れている。

収録曲には<Steel River>や名曲<Josephine>があるが、見逃せないのが、マックス・ミドルトンや彼も盟友ロバート・アーワイ(g / ゴンザレス)、メル・コリンズ、デイヴ・マタックス(ds)あたりの参加。マックスやデイヴ・マタックスは以前にも参加作があったが、この辺りの敏腕勢がココまで揃い踏みしたことはなかった。カナザワがこのアルバムに愛着が湧くのも、きっとその歌と演奏の燻し銀同士の組み合わせに感じるトコロがあったから。disc 2にはシングル・エディション、B面曲、ライヴ・ヴァージョン、新録版など全13曲。個人的には、本作に前後して組まれたスペシャル・ミニ・アルバム『Stainsby Girls』からの<Dancing Shoes> のジャジー・メロウさに心酔。かの名聖歌<Driving Home For Chrismas>が世に出たのも本作直後だったし、この頃のクリスは特に冴えていた気がする。

87年作『DANCING WITH STRANGERS」は、『ON THE BEARCH』に続くアルバムだったこともあり、見事に全英2位を記録。日本でも結構ヒットした。でもシングルにもなった<Let's Dance>を除くと、とてもヒットの後継作とは思えぬほど渋くて地味なので、当時はちょっと驚いた記憶が。録音メンバーはツアー・メンバーを起用したのか、堅実ながら強固にまとまったアンサンブルを披露する。<Loving You Again>とか、味わい深い好曲も隠れているんだけどね。逆に上手くなったと思わされたのはアートワーク。そういうところがクリスらしいのだ。disc 2にはシングル・エディション、B面曲、リミックスなど17曲。クリスにこんなに多くのリミックスが存在したことを知ったのは、今回のリイシュー・プロジェクトの大きな収穫だった。

そのあと、カナザワの愛聴版である新録ベスト『NEW LIGHT THROUGH OLD WINDOWS』を挟んで登場したのが、89年の『THE ROAD TO HELL』。初の全英トップに立ったアルバム(3週)で、実は世界的には『ON THE BEACH』ではなく、コレこそがクリスの最高傑作と認知されている。10年後に『THE ROAD TO HELL PART 2』が作られたのも、それに則ってのコトだっただろう。売れセンを狙っての作品でないことは言うまでもないが、シングルになったタイトル曲が象徴するように、哀愁のメロディ、枯れた歌声、咽び泣くスライド・ギターと、完全に自分のシグネイチャー・パターンを確立した。それこそ<On The Beach>しか知らないAORファンには、是非コレを聴かせたいほど。これ以降クリスのアルバムには、しばらくこのスタイルの楽曲が収められることになる。ジャケのイメージが重なることもあるが、個人的には何処かピンク・フロイドのデイヴ・ギルモアに重なるんだよなぁ…。マックス・ミドルトン、ロバート・アーワイも再び参戦。Disc 2 はやはりミックス違いにB面曲、そしてライヴ・ヴァージョン多めの全13曲が入っている。しかし、この人にマイケル・ブラウワー(チェンジや角松敏生でお馴染み、ニューヨークのミックス・エンジニア)が手掛けた Extended Remix が存在するとは思わなかった。

そして今回のプロジェクトで最も新しい作品が、91年の『AUBERGE』だ。個人的には他に比べて印象が薄かったアルバムだったが、実はコレも全英No.1アルバムを獲得していて。しかもタイトル曲のシングルは、クリスのキャリアで最高の全英16位に。正直それほどの楽曲とは思えないが、それだけアルバムの評価が高く、クリス自身のアーティスト・パワーがピークにあったという証左だろう。件の哀愁シグネイチャー・スタイルは、トケてしまうような<Looking For the Summer>で。クリス、マックス、ロバートにマーティン・ディッチャム(ds)という4リズムは、鉄壁の安定感を醸している。disc 2は例によってライヴ、B面曲やEP盤、新録ヴァージョンが中心だが、リミックスは1曲のみで山を越えた印象。ライヴの<On The Beach>があるので期待したら、ロバートのギターとマックスのエレピ・ソロ部分だけを抜粋したテイクだった。でもソロのバックが倍テン〜オリジナル〜レゲエと、変速自在のアレンジで、思わず身を乗り出してしまい…。こういうのをフィーチャーするところに、クリスのミュージシャンシップの素晴らしさが現れるんだな。

というワケで、名曲多しも、それが各アルバムに分散してしまって損をしているクリス・レア。ベスト盤は多いけど、それも “帯に短し襷に長し” で、日本人的嗜好、AOR好きにフィットするモノがない。それこそ、『Light Mellow Chria Rea』なんて作れたらサイコーなんだけどな。もちろん、今回のリイシュー5作品前後のアルバムも、順次エクスパンドして。