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角松の恒例年末ライヴ@中野サンプラザ2days、その初日にお邪魔した。会場入り前に腹ごしらえしようとサンロードへ行ったら、BGMに角松<Galaxy Girl>。よりによってこの曲かいッと思ったが、どうやらこの商店街は、その日サンプラザに出演するアーティストの楽曲を流す粋な計らいをやってるようで。軽くエサを摘んで戻るときは、<飴色の街>が流れていた。大好きな曲だけど、流石に今日はコレ演らんだろうな…。

(以下ネタバレあり)

ライトが落ちると街の雑踏のS.E.が流れ、ダンサーの少年少女たちがステップを踏みながら周囲を闊歩する。シンセの音にクラクションや電話のトーンが重なり、女性声のレスポンスと共に<I Can Give You My Love>がスタート。当時のバキバキ打ち込みサウンドは、同期を走らせながらのホーン入りバンド・アンサンブルに移行したが、なるほど今はこのくらいの方が耳に馴染む。でも更にデジタル感が強かった<I Can't Stop The Night>となると、どーなんでしょ? 印象的なシンセ・ベースは、ブオッブオッとよく鳴るバリトン・サックスに取って代わられ、面白れ〜!と思って聴いていたが、元々の曲調にはあまりそぐわなかったような… 演奏がどうこうじゃなく、あのパートにバリ・サクはないんじゃない?という見解だ。むしろ今回のホーン・アレンジでは、この女性奏者のバリ・サクは際立った存在を示していて、新たな発見になっていたから…。ビッグ・バンド・ツアーではセクション全体が前面に立ってアピールされたけれど、今回は通常の16ビート中心のバンド・アンサンブルに乗る形。なので本田氏が先陣を切るソロ・パート以外では、個人プレイヤーはあまり目立たない。それがシッカリ、バリトンの音が耳に威勢よく飛び込んできたので、印象に残ったのだ。

さて今回のバンド・メンバーは、山本真央樹(ds)、山内薫(b)、鈴木英俊(g)、森俊之(kyd)に、本田雅人(sax)率いる “Honda Horns”(2sax, 2tr, tb)、吉沢梨絵・上森真琴・吉川恭子の女性コーラスという、まるでバブリー期を思わせる大編成。でも当時はここにギターと鍵盤がもう一人づつとパーカッション、マニピュレイターがいたわけで、完全に音の洪水と言えた。でも今は、多けりゃイイ、というのではなく、ちゃんと引き算効果を念頭に置きつつ、やりたいことをやる、観せたいモノを観せる、というスタンス。更にダンス・チームとして東京スクールオブミュージック&ダンスの生徒たちが随所でステージに登場し、若々しいパフォーマンスで盛り上げるから、その効果は何倍にも増幅される。

久々の<Cinderella>などを挟んで、吉沢梨絵フィーチャリング・コーナー。アルバム『東京少年少女』、そしてそのミュージカル化には、劇団四季で活躍している彼女の力が不可欠だった。でも彼女のスタート地点には角松がいたわけで、今回はそのデビュー曲<Give It Up>と、『VOCALAND 2』からヒットしたデュエット<Never Gonna Miss You>を披露。そしてミュージカル仕立ての最新作『東京少年少女』コーナーへと突入していく。ダンサーの生徒たちはこれで卒業だそうで、我が子を見るような目で感情移入するファンも多かった様子。でも自分は、「果たしてココから這い上がってくる子が何人いるかな?」と、突き放した目で観ていた。スポ根なんて流行らないし、すぐにパワハラだの体罰だのと騒がれる時代、熱い指導が許されないなら、天賦の才を持つ者と自分で気づいて頑張ることができるヤツしか生き残れなくなる。実力主義のこうした現場では、これから逆に格差がドンドン広がっていくだろう。甘っちょろい感傷は、いよいよ邪魔になっていく。

<After 5 Crush>からの本編ラスト4曲は、オーディエンスの腰を浮かせつつも、全体的には以前より脂っぽさを控えてサッパリ気味に。<サヨナラは口ぐせ>がココに来たのは新鮮に感じたけれど、ココはまぁ、近年の予測通りのイメージで。

でも問題はアンコールだ。今年の『お前と俺』ツアーで、いつの間にか猫ミミが広まっていった<Cat Walk>。本人は、イイ年こいたオヤジやオバサマにおバカなことをやらせ、それをイジって喜んでいるが、ファンの間でも賛否が割れているらしい。ファンの皆さんがそれに乗るか反るか、それは自由だけれど、率直に言ってあの曲は、角松作品の中ではクオリティが低いと思っている。そもそも曲調が<WAになっておどろう>を再現しているように感じるし、メロディが天から舞い降りてきたという<WAになって…>に比べて少々作為的。AGARTHAではなく自分名義で当てようと、アルバムに入れてそのツアーで歌うのは結構だし、それを『お前と俺』で取り上げるのも良い。それを年末ライヴに加えるのも、今年を総括する意味で理解できる。でももうそこで充分じゃないの〜 この曲を演るくらいなら、他にもっと聴きたい楽曲、歌うべき作品がたくさんある。それこそファン・サーヴィスなら、<WAになって…>の方が全然意義が大きい。イジられて喜ぶMファンは定番化を望むだろうが、クリティカルな視点では、そのレヴェルに達した曲ではないと感じる。その意味では<CATCH ME>も同様で、今年の『お前と俺』ツアーの延長として捉えたい。

ところが反対に、アンコールのド定番<Take You To The Sky High>はこの編成ならではのアレンジが施され、いつものお祭りスタイルと違ってググッと中身の濃い演奏。オーディエンスは飛行機投げに興じて気づいた人は少なかったと思われるが、これから神戸へ行く方はシッカリ耳をそばだてて聴いて欲しい。それは<No End Summer>も然り。久々にカッチリしたバンド・アンサンブルの<No End Summer>で、エンディングのヴォーカルの遊びもほとんどない、ある意味とても真摯な<No End Summer>だと思えた。

クラブ規模のツアーのノリを引きずったか、ホール公演してはMCがクドイ気がしたので、そこは要修正。3時間15分の長尺は、角松ライヴでは取り立てて長いワケではないのに、今回は何故か少し長く感じた。反対に今回は音が良かったな、というのが、たまたま隣同士になったライター仲間と話したこと。普段はブーミーでダンゴ気味なのに、今回は比較的分離が良く、ベースやホーン・セクションがちゃんと聴こえてきた。それもあってか、全体的に耳馴染みやすいサウンドで好印象。若きダンサーの卵たちの参加でエンターテイメントとして見どころが増えたし、演奏面もセットリストの並び以上にチョッとした変化が楽しめた。

来年はミュージカルに『Rebirth 2』リリース、既に発表された春の全国ツアーをやって、オリンピック休暇と共に還暦を迎える角松である。カナザワも共に60歳だな…

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