rod stewart_royal phil

チャリティ・イベントでフェイセスを再結成したり、10年ぶりにジェフ・ベックと共演したという音楽的なトピックから、巨大な鉄道ジオラマの披露や元/現奥様4人と写真撮影したりというどうでもイイ話まで、いろいろ話題に事欠かない最近のロッド・スチュワート。3年前に前立腺ガンが発見され、人知れずそれを克服していたというニュースには驚いたが、その後は元気にツアーしているのでまずは安心。11月に発売されたソロ・デビュー50周年を飾るアルバム『YOU'RE IN MY HEART(ロッド・ステュワート with ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団)』も、英国の最新アルバム・チャートで首位になり、男性ソロ・アーティストの英アルバム・チャート No.1 最年長記録を更新したそうだ。

…とはいえこのアルバム、新録かというと、実はチョッと違っていて。ロッドのオリジナル・ヴァージョンからヴォーカルや主要な音を抜き出し、それをロイヤル・フィルハーモニー・オーケストラによる新アレンジでの演奏と融合させた、いわゆるリ・テイク・アルバムなのだ。目玉として、ティナ・ターナーとのデュエットで全英5位とヒットした<It Takes Two>をロビー・ウィリアムズをゲストに迎えて再レコーディング。そして、最近はエリック・クラプトンのブレーンとして名高いサイモン・クライミーの楽曲<Stop Loving Her Today>を唯一の新曲として加えている。

プロデュースはトレヴァー・ホーン。ロッド自身もレコーディングに立ち会い、「ちょっと心配だった。あの偉大なロイヤル・フィルハーモニー・オーケストラが、オレのヒット曲をどんな風に作り変えてくれたのか。でも心配なんか無用だった。彼らは見事にやってのけたよ」という旨を語っている。

振り返ってみれば、カナザワが初めて聴いたロッドのアルバムは、74年の『SMILER』。そこからフェイセズや初期ソロを遡り、ワーナー移籍後の『ATLANTIC CROSSING』からは、ずーっとオンタイムで聴いてきた。70年代後半の『A NIGHT ON THE TOWN』や<Hot Legs>入りの『FOOT LOOSE & FANCY FREE(明日へのキックオフ)』はかなり愛聴したが、80年代に入って成金趣味が鼻につき始め、しばらくは新作が出ればチェックする程度に。 その後シンプルに立ち帰った『ROD STEWART (Every Beat Of My Heart)』やバーナード・エドワーズと組んだ『OUT OF ORDER』、トム・ウェイツやヴァン・モリソンをカヴァーしたりマーク・ジョーダンが楽曲提供した『VAGABOND HEART』で再び距離が縮まったが、ゼロ年代になってクライヴ・デイヴィスと手を組むとアメリカン・ソングブック・シリーズを開始。作品的には良くても、コレならロッドじゃなくても…と、自分にはまた遠い人になった。

そうした意味では、愛着ある楽曲たちをゴージャスなサウンドでリ・テイクした今企画は、カナザワ的になかなか微妙なポジションだと言える。でも実際に聴いてみると、あまりイヤらしくないというか、意外にスンナリ耳に入ってきて。オーケストラ・アレンジの品の良さに加え、演出過剰期のナンバーをうまく避けた選曲が功を奏したのかもしれないなぁ。