fair weather

今日は夕方から打ち合わせ流れの軽呑みがあったが、このところはほぼ缶詰めで、ひたすらAOR系執筆。時々気晴らしに、まったくの別モノが聴きたくなる。そこで今回取りい出したるは、12月に発売された【ソニーミュージック・プログレッシヴ・ロック紙ジャケット・コレクション】 ブリティッシュ・ロック編から、フェア・ウェザーのワン&オンリー作『BEGINNING FROM AN END(週末からの誕生)』。アートワークのイメージだとサイケかプログレ、ないしはジャズ・ロックっぽいけど、実際の音はちょっと違うんです。

このフェア・ウェザーは、最近ではエリック・クラプトンやロジャー・ウォーターズとの活動で知られるアンディ・フェアウェザー・ロウ率いる5人組。60年代後半の英国でヒットを飛ばしてティーン・アイドル的人気を誇ったエーメン・コーナーの生まれ変わり、とも言えるグループで、71年にRCA傘下のネオン・レーベルから、このアルバムを出している。エーメン・コーナーが分裂してフェア・ウェザーとジューダス・ジャンプになった、と記述されることが多いが、実際は自由が効かずマネージャーの搾取に耐えられなくなったアンディが、真っ先にグループから脱退。残ったメンバーでツアーをこなした後、ホーン2人がジューダス・ジャンプを結成し、他の面々がアンディの下に集まって、このフェア・ウェザーが誕生したそうだ。

そしてそのサウンドは、英国ならではのスワンプ・ロック。R&Bやブルースの白人解釈をベースにする米産スワンプに対し、ブリティッシュ・スワンプは自由度が高く、楽曲によってハード・ロック寄りになったり、ジャズに寄ったり、ポップになったり、カントリー色をまぶしたり…と、振れ幅が大きい。基本的にアンディの書き下ろし楽曲ばかり演っているが、中にはオーティス・レディング<Don't Mess The Cupid>も。<I Hear You Knockin’>は、デイヴ・エドモンズが70年末にUKチャートNo.1にしたもの。最初にレコーディングしたのは、ニュー・オリンズのブルースマン:スマイリー・ルイスで55年のこと。それをエドモンズがカヴァーしたが、すぐには世に出ず、その後フェア・ウェザーがレコーディング。それから間もなくエドモンズがレコード化し、チャートへ送り込んだ。面白いのは、このフェア・ウェザー版のエンジニアを務めたのがエドモンズだった、という話。彼はミキサー卓に陣取ってフェア・ウェザーの演奏を聴きながら、「ヤベェ〜、早くレコードだしちゃお」なんて考えてたのかしらね?

今回のリイシューでは、オリジナル9曲に、その後のシングルなどボーナス6曲を追加したコンプリート盤。ドイツあたりではデフ・ジャケで出されたそうだが、やっぱりヒプノシスと並ぶ名デザイナー:キーフのこのジャケでないと。初期イエスやフリーあたりを髣髴させる楽曲もあるけど、志向はやっぱりロバート・パーマーとかジェス・ローデン、フランキー・ミラー、あるいはジャッキー・ロマックスとか、米国スワンプに憧れて海を渡った英国人シンガーたちだろう。個人的には、アヴェレイジ・ホワイト・バンドの前身であるフォーエヴァー・モアを思い出したり…