児島未散フライヤー(2020112)

3〜4年前から活動を再開しているシンガー:児島未散さんのライヴ、名付けて『感謝の嵐ライヴ』@中目黒 楽屋 にお呼ばれ。彼女の初期作品を拙監修のガイド本『Light Mellow 和モノ Special』で紹介したり、同コンピ・シリーズに収録したり、はたまた児島未知瑠名義で出た86年の2nd『MICHILLE』の再発を監修・解説したり…、というのがご縁である。“感謝の嵐” というタイトルは、このライヴ開催までに、ホント紆余曲折があったからだろう。

もともと今回のライヴは、バンド編成の形のモノとしては、デビュー間もない頃以来なのだとか。活動を再開してから3年以上経つそうで、これが7回目のライヴになるらしいが、今まではずっとアコースティックな小編成だったという。しかも当初10月に予定されていた公演は、台風直撃でこの日に延期。しかも本番2週間前の年末に、バンマスの池間史規(b)さんが急逝する不測の展開に。それでも「隊長(池間さん)は絶対演れ!と言うに決まってる」と確信し、メンバーを補充してこの日に備えた。そういう数多のトラブルを乗り越えてのライヴ当日。“感謝しかない” という気持ちになるのは、無理からぬコトだろう。

30年超ぶりのバンド・ライヴということで、セットリストも下記の通り初期ナンバー中心。デビュー曲<セプテンバー物語>に始まり、カナザワと同じテーブルに座られた杉真理さんと作詞家:吉元由美さんが提供された<Sweetest Joker>へ。序盤はわずかに硬さも見られたけれど、3曲歌ってメンバー紹介を挟んだあたりから、イイ感じで滑り出した。硬さを感じたのは、ヴォーカル・マイクのリバーブが薄かった所為があったかも。故・村田和人さん提供<マリンブルーの恋人達>も、ムラタ節炸裂のメロディに甘酸っぱい歌声が映えていて、隣の席の杉さんも「ムラタと2人でこれ歌ったヨ」なんて懐かしそうに耳打ち。自分がコンピに使わせてもらった<Best Friend>の軽いシャッフルも、実に彼女らしかった。

とりわけ印象的だったのは、未散さんの歌声の可憐さが以前と変わっていなかったこと。そもそも彼女はヴォーカル・スキルで勝負するのではなく、その歌声と詞曲のマッチングで魅力を放つタイプ。そのバランス感に変化のないことが、時間の経過を忘れさせてくれる。バックの4人もドタバタがあったとは思えぬほど。小屋のサイズに合わせた やや小振りの演奏ながら、まとまり具合は抜群だった。中でも角松バンドで終始いいギターを聴かせている鈴木パパゴン英俊が、またもや的確以上の好サポートぶりで。去年11月の林哲司さんの45周年ライヴの時も、メッチャ素敵なプレイを披露していたが、トーンの選び方、ソロやオブリの緩急などが自分のツボにシックリくるのだ。角松プロデュースの “空と海と風と” から彼のプレイを聴いているが、今 剛の後を受けて角松バンドで活躍し始めてから、失礼ながら「この方、こんなに上手かったっけ?」と感心させられることしきりで、今日もその一端を見せつけられた。また急遽トラを務めることになったベースの藤谷一郎、多分この人のプレイを聴くのは今回初めてだったと思うけど、彼もイイ感じでグルーヴしてた。

しばしのインターバルを挟んでの2ndは、ピアノ・デュオでのユーミン・カヴァーから。次でギターが入り、その次はベースが入り…、という構成の妙でアンプラグド・セットも緩ませず、フル・メンバー揃ったところで再度カヴァーの<Goodbye Summer Breeze>(竹内まりや)。ここから終盤の盛り上げで、最大のヒット<ジプシー>など交えながら。アンコールでは活動再開後の新曲など披露し、最後は、本当ならこのステージにいるはずだった池間氏のオリジナル<きみにあいたい>で、涙を誘いつつのエピローグ。今日の日を待ち侘びた熱心なファンには、きっと思い出深いステージになっただろう。

今後の課題は、この実り多きバンド・ライヴを如何に次へ繋げていくか、ですね? 遠巻きながら、期待しています。

 《1st》
1. セプテンバー物語
2. Sweetest Joker
3. プリテンド
4. サンセットブールバード
5. 海のリトグラフ
6. マリンブルーの恋人達
7. Best Friend

《2nd》
8. 卒業写真
9. 汐風の街
10. ミスティ
11. Goodbye Summer Breeze
12. 一歩ずつの季節
13. Lapis Lazuli
14. ジプシー
15. floraison

-- Encourages --
16. 青い鳥
17. Sing for you
18. きみにあいたい