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当ブログではスッカリお馴染みであろうブルー・ペパーズの NEW SINGLE 発表記念ワンマンライヴ@目黒 Blue Alley Japan。気はつけば、ほぼ1年ぶりのライヴというコトで、立ち見までソールド・アウトの大盛況。これには驚いたが、演奏陣が ほぼ20代なのに、オーディエンスが40〜50代中心というのが何とも… でもこココに集まっているのはピュアな音楽ファンが中心だから、ひとまずこれでOKで、ココからジワジワッと若手に浸透させていけばイイのかな。

今回、ブルー・ペパーズ/福田直木(vo)と井上薫(kyd, cho)をサポートするのは、高木 "大丈夫" 大輔/外園一馬(g)、伊吹文裕(ds)、初参加の山本連(b)、そして佐々木詩織(vo,cho)という顔ぶれ。ブルー・ペパーズとしてのライヴは1年ぶりでも、各メンバーは頻繁にスタジオ・ワークやライヴ・サポートで顔を合わせているから、息は常にピッタリ。みんな今では、名前の通った大御所セッション・ミュージシャンたちを凌ぐ多忙ぶりだ。実際この日も、詩織ちゃんが本番間際の会場入り。ライヴではアンコールまで登場しなかったので、「あれ〜ッ、どうしたんだろう?」と心配した方もいたようだ。実は彼女、夕方まで某大物のリハーサルが先にスケジュールされていたため、安全策を取って出番を遅らせることにしたそうだ。

福田と井上は、シングルのジャケ通り純白の出で立ちで、ちょっと恥ずかしそうに登場。1st ステージは、いきなりのド新曲<Say No(仮)>、そしてアルバムからの<八月の影法師>からイイ感じでスタートした。福田は以前より声が出るように。普段、仏頂面で鍵盤に向かっている井上も、メンバーと顔を見合わせてニヤニヤしていて、なかなかの滑り出しだ。最初は出音が若干落ち着かない印象もあったが、まぁ大勢に影響はナシ。5曲めに今回シングルになった新曲<Believe In Love>。これは冒頭<Say No(仮)>のように、まだ書きたてホヤホヤだった一昨年のライヴでお披露目され、その時のプリ・プロをブラッシュアップする形で完成させた。楽曲についての解説は、デジタル・リリースのタイミングでこちらにポストしているのでご覧いただきたいが、この曲をライヴでやるのは結構手間だと思われ…。とりわけ高木・外園両ギタリストが織りなすリズム・アンサンブルは、大きな聴きモノだった。また要所要所で同期を使っていた鍵盤類は、実にきらびやかなトーンに。MCで「80年代半ばのサウンド、フェンダー・ローズよりDX7、敢えて打ち込みのドラムを使った」と説明していた通り、それを見事ステージで再現していた。

インターヴァルを挟んでの2nd 最初は、福田・井上による ちょっとしたトーク・コーナーからスタート。新曲の発想の源、そしてどういうプロセスで作られていったか、そういうレコ発ならではお喋り。溢れる音楽愛ゆえMCが長くなってしまいがちな彼らだから(1st は6曲で1時間…)、敢えてこういうコーナーを作ったのは正解だったと思う。本編MCも多少ダレた部分 無きにしも非ずだったものの、2人の絡みは以前より軽妙になり、興味を持って聞いていた人が大多数だろう。前半わずかにまとまらない面があったPAも、このインターバルで修正されたようである。

順にメンバーを呼び込んで最初にプレイされたのは、フォープレイがドナルド・フェイゲン『KAMAKIRIAD』収録の<Snowbound>をインストでカヴァーしたヴァージョンの孫カヴァー。続いてアルバム『RETROACTIVE』からの<サーチライト>では、外園一馬が大爆発した。前回ライヴだった LIVE Light Mellow vol.1.5 出演時をキッカケに、彼のこの曲のギター・ソロはブルー・ペパーズ・ライヴのひとつのハイライトになっている。メンバーもそれを意図しており、ステージ上で「もっと行け〜 ドンドン行け〜」と煽らんばかり。外園クン自身も、自分のライヴでもないのにココまで思い切りソロを弾き倒す機会はないはずで、もうスゴイのナンの。しかも早弾きやトリッキーなプレイで斬り込むのではなく、フレーズの多彩さ、瞬時のソロの組み立てで勝負する。何より表現力が豊かだから、一瞬足りとも飽きさせない。あの一瞬、オーディエンスのすべての目は外園一馬に釘づけだったのは間違いない。開演前に楽屋へ顔を出した時、彼や高木くんとポール・コゾフ(フリー)の話になったが、止めどなく溢れ出てくるアドリブを心奪われながら、89年生まれの彼が76年に急逝した不世出のウィーピング・ギタリストに心酔していた時期があるというのを思い出していた。表現したい音が自分の中にあって、それを具現化するために技術やセンスを磨く。そこに近道はないのだ。そしてそこに熱いパッションが入ることで、演奏がエモーショナルに舞い上がっていく。この日のゾノ君のギター・ソロは、最近すっかり手馴れてしまった感のあるラリー・カールトンを軽〜く凌駕してました

聖なる興奮に包まれる中で続いてステージに掛けられたのは、シング・ライク・トーキングのカヴァー<見つめる愛で>。SLTの中ではスティーリー・ダン色の強い楽曲ながら、そこには楽曲に対する想いだけでなく、先輩SLTに対するシンパシーもあったのでは? シティ・ポップの流れでデビューの機会を掴んだブルー・ペパーズながら、彼らの音に対するコダワリの強さ・ベクトルは、同世代・同系統のアーティストには比すべき対象がいない。キリンジも掘込兄弟というより、プロデューサー:冨田恵一への憧れだ。そこで少しづつ目線を上げていった時に、真っ先に視界に入ってきたのがSLTだった、ということだろう。そういえば福田のヴォーカルも、ちょっと竹善さんっぽい雰囲気になったかな。

この辺りで、「僕らをヴォーカルの福田とキーボードの井上のユニットだと考えるのは間違い」という発言も。ブルー・ペパーズは基本的にソングライター/サウンド・クリエイターのチームであり、だからこそスティーリー・ダンをリスペエクトする、というスタンスが見える。加えてもう1曲『Blue Peppers EP』から<星空と孤独のマスカレード>を取り上げ、2nd ステージ冒頭のスティーリー・ダン的コーナーは最高潮にて終了。若いアーティストの中にも、これだけの志と実力を兼ね備えた連中がいるんだよということを、カナザワは声を大にして言いたくなった。

<秋霜(しゅうそう)>を「アキシモ」と読まれてしまったという自虐ネタにも、彼ら流のニヒルな批評精神を感じるところ。そして<汗は甘い口づけ>では恒例のオーディエンス参加コーラスを交え、あっさりと2nd 終了。でもその先に、まだまだお楽しみがテンコ盛りだった。

アンコールになって、大喝采の中ようやく佐々木詩織ちゃん登場。ブルー・ペパーズのオトナなファンには、すっかりマスコット的存在になっている彼女。まずは『ルパン3世』でお馴染み<Love Squall>を斬新なアーバン・ミディアム・アレンジで。現在『ルパン3世』の音楽の生みの親:大野雄二さんのバンドで、Fujikochansの一員としても活躍中。この曲は以前、日本の某大物プロデューサーの下で数曲デモ録音した時にも歌っていて。その時も井上がアレンジ/鍵盤、伊吹・山本連のリズム隊にギター:外園というラインアップだった。その後の詩織ちゃんソロ・ライヴでもこの曲をレパートリーにしていたが、今回は少しグルーヴを強調したナイスなアーバン・ミディアム・アレンジで披露。<Believe In Love>にも通じるジェイ・グレイドン・スタイルの引用だが、スロウと相場が決まっているこの曲にコレを当てハメるアイディアが斬新。オマケにエンディングには、もろエアプレイしたリード・ギターのハモリで華麗なシメ。完全書き譜のリード・パートにギタリスト2人でハモリを考え、リハで猛練習したとか。終わってハイタッチする高木・外園両人の笑顔が爽やかでした。

そしてこのライヴのテーマでもある7インチ・シングルのカップリング<マリンスノーの都市>は、福田と佐々木詩織の初デュエット。これも曲自体については 前述ポスト に書いた通りだけど、数々の大物共演で場数を踏んできた詩織ちゃんと一緒に歌うことで、福田のヴォーカルのポテンシャルが引き出された、という井上のMCに大いに納得。まだまだ伸びシロがありそうだけど、まだ素人に毛の生えた程度だったEP発表時の歌に比べ、格段と成長した。これからソウル寄りの楽曲にもドンドン挑戦したい、という2人だから、更なるヴォーカルのスキル・アップが楽しみなところである。

そして本当のプロローグは、もはや定番となった詩織ちゃんヴォーカルの<6月の夢>。スケジュールの都合とはいえ、結果的に詩織ちゃんが一番美味しいトコロを持っていったような…。終演後のサインや撮影会も、メンバー2人に噛めず劣らず引っ張りだこの詩織ちゃんだった

前半やや控え目な印象だった連クンのベースも、2ndになってグルーヴ感が増幅。シュアーな伊吹クンのドラムと相まって、なんともステキな空間を捻出した。高木君のいぶし銀的ギターにも味があり、流麗なゾノ君と良いコントラストを描いていたな。

マイペースでレコーディングを進めているため、次回ライヴの予定など見えていないが、毎回何曲かかカヴァーを演ってきているので、アルバム完成を待たずに企画ライヴを持つことも可能だろう。この盛況ぶりを見ての通り、ブルー・ペパーズのライヴを待ち侘びているオーディエンスは決して少なくないのだから…。

blue peppers 20200124