shawn lee

最近はヤング・ガン・シルヴァー・フォックス(YGSF)の頭脳としてスッカリお馴染みになったショーン・リー。しかし彼は元々、エイミー・ワインハウスやトミー・ゲレロなど多くの楽曲を手掛けてきたことで名を上げたプロデューサーであり、自身のピンポン・オーケストラやインクレディブル・タブラ・バンドを率いてきた奇才的マルチ・プレイヤー。そのショーンが昨年暮れ、久々のソロ・アルバムを出している。YGSFの3枚目となるニュー・アルバムの解説に着手する前に、シッカリそれをチェックしておこうと、サラリ聴き流したままになっていたCDに再度手を伸ばした。

ショーンのソロ作は約5年ぶり。ヴァーカル・アルバムとしては、05年に日本でリリースされた『HARMONIUM』以来のソロ・アルバムになるそうだ。YGSFでも、彼のウエストコースト・ロック・ラヴァーぶりが存分に発揮され、それがAOR/西海岸ロック好きの日本で大きく受け入れられているワケだが、果たしてコレは?

奇才でありマルチ・ミュージシャンというと、すぐにトッド・ラングレンを思い浮かべてしまうが、ショーンの場合はソウル/R&B色はやや薄く、その代わりにアメリカン・ルーツ・ミュージック〜カントリー色がリッチな印象。何れにせよ、かなり趣味的なプライヴェート作品なのだが、トッドはポップな時は徹底してポップに攻めるのに対し、今のショーンはYGSFがあるからか、どこまでもノホホンとしてて趣味的。トッドの方が多趣味で振幅の幅が大きくて極端な気がするが、ショーンはむしろ自分で気に入った路線をいくつか絞り込んで、そこを深く掘り上げていくコダワリを感じる。

このアルバムも多彩というよりは、ジックリと好きなことに取り組んだ末に出来上がった作品というニュアンス。ペダル・スティールにヴァイオリン、サックス、ピアノという専門的プレイヤーをゲストに招いた以外は、すべて自分の歌と演奏でアルバムを構築しており、本当に宅録的ニュアンスが強い。オープニング曲が<Wichta>、YGSF的なラス前のポップ・チューンが<Kansas City Summer>、もしかして…と思って調べたら、やはりショーンはカンザス州ウィチタの生まれだった。『RIDE S AGAIN』というタイトルだって、如何にも…。乱暴に言っちゃうと、打ち込み中心で作った宅録スワンプ・アルバム。その意外性が、やっぱりショーンの持ち味なのだ。YGSFの舞台裏を垣間見るような、そんな作品。

ちなみにこのアルバムは、10年に亡くなったトニー・ジョー・ホワイトの音楽と思い出に捧げられている。