morizono_lady violetta

コレはヤラレタ
アルバム1枚、何処を切っても<Lady Violetta>。金太郎飴といやぁそうだけど、よく見れば顔の表情やポーズが結構違っている、という感覚。最近はリミックスがバンバン作られる時代なので、人気アーティストのリード曲のマキシ・シングルなどでは、CD1枚同じ曲がミックス違いで何パターンも入ってることが珍しくない。でもこのアルバムのように、ひとりのアーティストの代表曲1曲を、複数のスタジオ・テイク、各種ライヴ・ヴァージョンで蒐集し、ひとトコロにまとめるというのは、ちょっと画期的かも。しかもそれが、ただ出せば売れてくれる人気者ではなく、日本のロック界のレジェンダリーなベテラン・ギタリスト。どうしたってファン層は限られる。でも逆に言えば、それだけ絶対的な存在感を放つミュージシャンであり、吸引力の強さを持った楽曲だからこそ実現した企画なのだ。

カナザワが<Lady Violetta>を初めて聴いたのは、もちろん四人囃子『GOLDEN PICNICS』(76年)で。既に『一触即発』にヤラレていたから、発売と同時に購入した。目玉は言うまでもなく組曲風の大曲<泳ぐなネッシー>。でもあまりにブッ飛んだところがある曲なので、すぐには馴染めなかった。そんな中ですぐに魅せられてしまったのが、アルバム・ラストに収められた、この麗しの<Lady Violetta>。当時カナザワは高校1年生だった。

ところがオリジネイターである森園勝敏は、『GOLDEN PICNICS』発表と同時に四人囃子を抜けてしまい…。Guitar Work Shop に参加したのち新人フュージョン・グループとして話題を集めていたプリズムに加入。そしてそれを追うようにカナザワも、プリズムのデビュー盤を待ち構えて購入したのを思い出した。まだガキだったから、技巧派の若手ギタリストが仕切るグループに何故森園が参加するのかよく分からなかったけれど、カッティングでも自己主張できる森園のプレイに、テクニックやリードとは次元の違う演奏表現の魅力を まざまざと見せつけられた思いがした。ソロやフレーズではなく、トーンとグルーヴにセクシュアリティを感じた日本のギタリストは、森園が初めて。そう、彼のギターはエロいのだ その真髄が、この<Lady Violetta>である。

『GOLDEN PICNICS』でのこの曲のポジションは、ロック・バンドが演るフュージョン系インスト曲といったところ。事実当時のロック系ジャーナリズムからは、批判的な意見も多くあった。『GOLDEN PICNICS』自体がクロスオーヴァー化に大きく踏み出したアルバムだったから、アルバムの中で特に浮いている感はなかったが、ミュージシャンもジャーナリズムも、そしてファンも、あそこでロック側に踏みとどまるか、先に進んでフュージョン方面に行くかのは瀬戸際だったのは確か。その槍玉に挙げられたのが<Lady Violetta>だったワケで、結局傾倒ぶりが激しかった森園は、当然の如く脱退の道を選んだ。

『GOLDEN PICNICS』から<Lady Violetta>のシングル盤が出たのは知っていたが、長年、尺を短くしただけの編集ヴァージョンだと思っていた。ところが数年前、ヒョンなトコロで実際にシングルを聴き、エレキ・ギターを弾き直しているのを知ってビックリ(オケは編集)。本人は今イチ満足してないらしいが、コレは貴重な収録だろう。貴重と言えば、プリズムの04年ライヴ・ヴァージョンも。CDには収録がなく、DVDからのオーディオ・トラックだそうである。個人的には、Guitar Workshop Vol.2 LIVE からの2テイクが興味深いところ。村上ポンタ秀一、小原礼、坂本龍一という KYLYN なリズム隊である上、1日違いの両ヴァージョンの違いが気楽に楽しめるから。特に礼さん、スロウ・バラードなのに果敢に動き回っていてスゲェな。多くのテイクは手持ちであるけれど、まとめて聴き比べなど絶対しないから、これは魅力再発見でもある。アートワークに、曲作りのモチーフとなったパリッシュを持ってきたことを含め、アーティストと楽曲に対する愛情とリスペクトに溢れている。ナイス・ジョブです

そう言えばカナザワも、01年に初めて組んだ和モノ・コンピ『Light Mellow ~ City Breeze from East』のソニー編で、ラストにこの<Lady Violetta>を使ったっけ…。シティポップ狙いのコンピをインスト曲で締めるのは、当時は少し勇気が要ったけれど、コンピ全体で20年後の今を先取りした選曲だったと思う。この曲はカナザワにとってフュージョンの名曲ではなく、歌のないポップ・バラード。あの時のチョイスは、やはり間違っちゃいなかったな。

しかし名曲というのは、45年の時を超え、こうして1時間ぶっ続けで聴いていても全然飽きることがない。でも最近のチャート物は、3分と持たずに飽きてしまうな…