mandoo

閉塞感この上ないご時世ながら、Stay Home でも気分次第で爽やかに。そんな時、気分転換のお役にお役に立てそうなのが、拙監修 Light Mellow searches から登場の、このフランス初のニュー・カマー:MANDOO(マンドゥー)だ。Addiction というのは、中毒や熱中、病みつきになること。こりゃあチョっと、Addiction to Mandoo だな

フランスといえば、ヨット・ロック方面では “フランスのネッド・ドヒニー”と言われるアル・サニーが人気上昇中だけれど、ガエル・ベンヤミン率いるガイスターがいたり、ルーカス・アルーダやアンドレ・ソロンコのアルバムを出している Favorite Recording があったりと、日本に負けず劣らず AOR人気の高いお国柄。当然カナザワも早くからアンテナを伸ばしていて、このMANDOOもミニ・アルバム『ANOTHER ONE』からチェックし、1st フル・アルバム『SWEET BITTER LOVE』(12年)も早々にゲットしていた。そうしたところ、この新作に当たってはガエルから紹介が入り、日本盤のリリースに繋がった。情報はそれ以前から掴んでいて楽しみにしていたが、“コレは出せ!”と神様が言ってるんだなと。

さて、MANDOOは、シンガー/ベーシストのピエール・ヴァニエ、キーボード奏者エスター・ベン・ダウドから成るウエストコースト・サウンド好きのデュオ・ユニット。楽器のレッスンを受けていた音楽学校で出会った2人は、それぞれジャズ、ポップ、ロック、ワールド・ミュージックなど多種多様なバンドで活動していて、そろそろ自分自身のバンドを組みたいと思っていたとか。
「最初はアース・ウインド&ファイアー、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダー、クルセイダーズなど、ソウル、ジャズ、ファンクの名曲をプレイしていた。僕がベース、エスターがフェンダー・ローズ、ヴォーカルは2人で取ってね。パリのクラブでたくさんライヴを演ったよ。その後もっとパーソナルな方向にシフトしたんだ」
デュオになった現在も時折ライヴを演っているが、プライオリティを置くのは作曲とレコーディング。ついでに2人は、今では公私に渡るパートナーでも。ま、当然でしょうな

「大きな影響を受けたアーティストは、アル・ジャロウ、スティーリー・ダン、マイケル・マクドナルド、マイケル・フランクス、ボビー・コールドウェルだね。それに加えて僕らはミュージシャン・ラヴァーでもある。元々2人ともジャズが好きで、スティーヴ・ガッドやラリー・カールトン、ジェフ・ポーカロ、ジョー・サンプル、マイケル・ブレッカー等など、スタジオ・ミュージシャンを通じてウエストコースト音楽に出会ったんだ。彼らは70〜80年代のアメリカ黄金期のプロダクションを支えていたからね。この時代のUSサウンドは、僕らのイマジネーションの源泉なんだ」

そういう2人だから、彼らがクリエイトする音楽には、自ずとナチュラルなぬくもり、ハンドメイドの柔らかさが宿る。それが敬愛するシンガー・ソングライターに伝わった。
「僕らの曲に詞を書いてた仲間が多忙になってしまったんだ。ちょうどその頃、エリック・タッグの『RENDEZ-VOUS』や『DREAMWALKIN’』をよく聴いていた。その賛辞を伝えたくて彼にコンタクトしてみたら、とても丁寧な返信をくれた。しかも MANDOOのこともチェックしてくれてて、“作曲を手伝いたい” って。それですぐ仲良くなって、コラボレーションがスタートしたんだ」

アルバム制作には3〜4年。でもそれだけ時間を掛けた成果は、シッカリ作品に現れている。スターター<Can't We Get Along ?>は、パイロットを髣髴させるブリット・ポップ・チューン。<So Much Better>はコーラスが印象的な軽快ソング。<Trail Of Tears>はジョー・コッカー風のスロウ・ナンバー。哀愁メロからメジャーへ展開するアダルト・ポップ<Promise Me>。ホーンやシンセを絡めたアーバン・メロウなミディアム<When I’m Calling>に、官能的ウィスパー・ヴォイスに悩殺される<Brazilian Romance>、そしてダンサブルな<Welcome To My World>と、どの曲もハイ・レヴェル。そしてラストは、リー・リトナーIsn’t It You?>を髣髴させるロマンティックな<Just Like Heaven>を。どの曲も安定したクオリティで、アルバム一枚、ちょっとアッパーな心持ちで楽しめる。加えてこの日本盤には、デビューEP『ANOTHER ONE』から2曲をボーナス収録。

「西海岸のヴァイブスを持ったオーレ・ブールドやステイト・カウズ、ガイスターなどの作品は大好きだ。ジェイコブ・コリアーやスナーキー・パピーなど、新たなジャズ・シーンも追い掛けているよ。それ僕たちは、ジャズ・ピアノを勉強中の息子を通じて、たくさんのJ-POPや日本のエレクトロ・サウンドに触れているんだ。例えば星野源、Moe Shop、Kan Sano、黒田卓也とかね。彼らも大好きだよ!」

あらら、コレはビックリ。日本のAORファンもスタイルや参加ミュージシャンにこだわり過ぎず、柔らかアタマでいなくては