crusaders_rhapsody

ビル・ウィザーズを偲びつつで、クルセイダーズ、80年の激渋名盤『RHAPSODY AND BLUES』。彼が歌う<Soul Shadows>のイメージもあるだろうけど、前後が『STREET LIFE』と『STANDING TALL』なのだから、やっぱりスルメ系の地味な名盤と呼べるかな。フランス煙草ジタンのデザインを拝借したアートワークも淡い感じで、物憂げな空気感漂うアルバムである。

当時のメンバーは、ジョー・サンプル、ウィルトン・フェルダー、スティックス・フーパーという不動の3人に、ディーン・パークス/ローランド・バウティスタ/ボブ・マン/フィル・アップチャーチ(g)、エイブ・ラボリエル/アルフォンソ・ジョンソン(b)、ポウリーニョ・ダコスタ/シェイラ・エスコヴェド(per)など。あぁ、この時期のリズム・ギターはデヴィッド・T. ウォーカーじゃなく、アース・ウインド&ファイアー復帰前のバチやんだったのネ。地味なアルバムなのに、パーカッションがシェイラ・E.というのも面白いけど、プリンスに見出される前の彼女は、本当にラテン・パーカッションの名門一門の跡取り娘的存在だったのだな。

この頃の古き良きクロスオーヴァー/フュージョンを聴くと、本当に心安らぐ。一音一音にミュージシャンの感情とイマジネーションが詰まっている。テクニックというのは、それを表現する道具に過ぎないコトを痛感する。

最近SNSを見ていると、国内外問わず、バカテクのお子ちゃまがたくさん出てくる。その演奏スキルは確かにスゴくてビックリさせられるけど、ほとんど曲芸みたいなもので、音楽としては然して面白みが感じられない。言ってしまえば、“こんなスゴイ楽器持ってます” というのと同じだ。いい表現をするために有効なツールを、他人様より多く持っているに過ぎない。子供のうちはそれで充分だけど、問題はそこから。成長していくに従ってチャンと表現したいものを見つけられるかどうか、それが大事だ。ただ演奏が上手いだけじゃ、楽器の先生にしかなれないよ

クルセイダーズもジョーとウィルトンは鬼籍に入っちゃってるし、今度はゲスト・シンガーのビル・ウィザースまで。でもこういう静謐な名盤こそ、音楽の本質を伝えるモノだと思うな。
改めて Rest in Peace...