jaye p morgan

角松敏生が22日リリースする新作『EARPLAY ~ REBIERTH 2』で、<Can't Hide Love>をカヴァーしていることは少し前に書いた。一番有名なのはアース・ウインド&ファイアー、角松がインスパイアされたのはディオンヌ・ワーウィック。そのディオンヌが『FRIENDS IN LOVE』で歌う数年前に、実はアイザック・ヘイズとのライヴ盤で歌っていたことは最近知ったけれど、もうひとつ、マニアな方々の間でチラリ話題に上がっているのが、ジェイ・P・モーガンの76年版である。

このアルバムが世に知られるようになったのは、大物プロデューサー:デヴィッド・フォスターが豪華ゲストと一緒に来日した『J.T. Super Producers '94』がキッカケだ。その時に作られた公演パンフレットに、このアルバムが紹介されたのが最初である。フォスターにとっては、キャリアで初めてのフル・プロデュース・アルバム。カナダからL.A.に来てスカイラーク<Wildfower>がヒットした後、引っ張りだこのスタジオ・ミュージシャンになったものの、このままでは使い捨てにされるだけと感じ、アレンジャーとしてセッションを仕切る側に。そして更にその上を目指したいと考え始めた頃に、ジェイ・P. のスポンサー方面から制作を依頼された。

ジェイ・P. モーガンは50〜60年代に人気のあったお色気系ジャズ・ポップ・シンガー。既にメジャー契約はなく、TVの音楽番組にレギュラー出演したり、スポンサーを見つけてはアルバムを作る、そういう活動をしていたらしい。よってこのアルバムも実質的には自主制作盤で、その存在はまったく知られていなかった。何せフォスター自身が、正式発売されたかどうか把握していなかったほど。当然アナログ盤は激レアで、軽く数万円超で取引されるようになった。00年にCD化され、その後アナログ盤も復刻されて当たり前の存在になったが、オリジナル盤は現在でもかなり高値がつく。

参加メンバーは、当時のフォスターのお仲間たち。盟友ジェイ・グレイドンを筆頭に、ビル・チャンプリン、ケニー・ロギンス、レイ・パーカーJr.、リー・リトナー、ジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ハンゲイト、ハーヴィー・メイソン、エド・グリーンにタワー・オブ・パワー等などが集合。今では大物ばかりなので、さぞギャラが高かったんじゃないか、と思ってしまうが、当時はみんな駆け出しみたいなモノだったので、お友達価格での参加と思われる。収録曲もフォスターやグレイドンの書き下ろし曲と共に、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルが歌ったアシュフォード&シンプソン楽曲、アヴェレイジ・ホワイト・バンド、サンズ・オブ・チャンプリンなどのカヴァーをファンキー&メロウにキメている。その中に<Can't Hide Love>があったワケだ。

ジェイ・P.版<Can't Hide Love>のラインナップは、デヴィッド・フォスター(kyd)、ジェイ・グレイドン(g)、レイ・パーカーJr,(g)、ヘンリー・デイヴィス(b)、ハーヴィー・メイスン(ds)、レニー・ピケット(sax)、ビル・チャンプリン/ドニー・ジェラード(back vo)など。このうちフォスター&グレイドン、ビル・チャンプリンがディオンヌ版に参加している。アースのがヴォーカル・フィーチャーで比較的あっさりしているのに対し、ディオンヌ版やジェイ・P.版は前半でジックリ歌を聴かせ、後半は演奏でグイグイ盛り上げる作り。片やストリングス、片やホーン&シンセ群という違いはあるんだけれども。

何れにせよ、ジェイ・P. の76年作は、他にも魅力満載なので、これを機に是非チェックを。