chu kosaka_people

名盤『HORO』にも匹敵する小坂忠のもうひとつの名盤『PEOPLE』がリマスターされ、高音質CDとアナログ・レコードで再発された。01年11月のリリースから18年半ぶり、初めての復刻である。カナザワは今回、クリア・ヴァイナルのアナログ盤をゲット。個人的には「HORO』より聴く回数が多いかも。それぐらいシックリくるアルバムなのだ。

当時の忠さんはゴスペル音楽に専念していて、セキュラー音楽(一般的な商業音楽)の制作は77年の『MORNING』以来、20余年ぶりだった。

今も歌い続けているのは、「歌に人を励ます力があるのであれば、詞や曲を書き、歌うべき」だと思うから。そして「だからこそ僕は自分の音楽を聴いてくれる人たちにメッセージを伝えるべきなんだ」と。これは今回の再発に封入された本人インタビューの言葉。そういえばこのアルバムが出た当時、今はなき乃木坂ソニーで、忠さんと角松敏生の対談を取材したのを思い出した。角松の『SPECIAL LIVE 89.8.26 / MORE DESIRE』に収録されている<機関車>は、忠さんのオリジナルだ。

プロデュースは細野晴臣。参加ミュージシャンは細野以下ティン・パン・ファミリー、鈴木茂/佐橋佳幸(g)、佐藤博(kyd)、林立夫(ds)、浜口茂外也(perc)にスムース・エース(cho)、ブレンダ・ヴォーン(cho)、愛娘のAISHA(cho)など。<HORO>のセルフ・カヴァー、カーティス・メイフィールド(インプレッションズ)の<People Get Ready>の日本語カヴァーを除くと、すべてオリジナルの新曲だ。曲は細野さんや佐橋さんからの提供もあるが、作詞はすべて忠さん本人で、多くは聖書に題材を求めている。とは言っても辛気くさいところは微塵もなく、コーラスが時々ゴスペルっぽくなる程度で、基本はシンプルなフォーキー・ソウルにリンクした仕上がり。佐橋作曲のシングル曲<夢を聞かせて>なんて、まるっきりジェイムス・テイラーだ。

本人も語っているように、今の小坂忠を作った重要なアルバムである。最近のライヴで歌っている楽曲も少なくない。そしてこういう時期だからこそ、静かにチカラを貰いたい、魂のエナジー・アルバムだ。