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引き続き、日本のジャズ・クロスオーヴァー/フュージョン事始めについて考察中。今回のお題目は、サックス奏者を中心に、という注釈付きなのだが、そうでなくてもやはり渡辺貞夫、ナベサダのことは忘れられない。60年代後半はボサノヴァやブラジル音楽、70年代前半はアフリカに魅せられていた感のあるナベサダだが、中盤からはそれまでのスタイル変遷を振り返るようにライヴ・アルバムを連発。その上でギアを切り替えるように突入したのが、77年作『MY DEAR LIFE』に始まるクロスオーヴァー/フュージョン・エラであった。

かくして、リー・リトナー&ジェントル・ソウツのライヴ盤『 AUTUMN BLOW』を挟んでリリースされたのが、この『CALIFORNIA SHOWER』。アレンジは、これを機に長い付き合いとなるデイヴ・グルーシン。そしてバックには、グルーシンとリトナー以下、チャック・レイニー、ハーヴィー・メイスン、アーニー・ワッツ、ポウリーニョ・ダ・コスタらが付いている。タイトル曲は男性化粧品のCMソングに使われ、若き日の草刈正雄と共にお茶の間へ。それが大ヒットしたおかげで、続編では草刈とナベサダが一緒にブラウン管に登場するようになった。

日本のジャズ界を牽引し、周囲には大変厳しかったと伝えられた当時のナベサダだが、広く顔が知られた彼は、いつもスカッTO底抜けに明るい笑顔。それがカリフォルニアの青い空のイメージと相まって、フュージョン・ブームの火付け役になったのは間違いない。音楽的な魅力をアナライズすれば、ご本人が書く楽曲のメロディがメチャクチャ親しみやすいこと、アレンジと演奏のまとまりやバランス感の良さがキモだったと思うが、それが当時注目されていた米西海岸文化のムードとバッチリ合致した。

当時、ハード・ロックやプログレ好きの高校生だったカナザワにとっても、和製フュージョン事始めの中のひとつ。イイ陽気なのに外出もできないストレスを、発散してくれるサウンドでもあるなぁ。