CWF2

AORレジェンドで元シカゴとしても知られるビル・チャンプリン、TOTO3代目シンガー:ジョセフ・ウィリアムス、そして北欧スウェーデンのセッション・シーンで活躍するギタリスト/プロデューサーのピーター・フリーステット。彼ら3人が組んでいるユニット:チャンプリン・ウィリアムス・フリーステット(通称CWF)の2nd『CWF 2』が、いよいよ発売に向けて露出を増やしてきた。本来なら4月末に日本先行リリースで出ていたところが、コロナの影響で5月20日に発売延期。もともと15日に設定されていた欧州リリース/デジタル・リリースが先に走り出すことなった。ただし日本盤はアートワークに加え、ボーナス収録等で欧州盤と違いがあるので、よーくチェックされたし。アナログ盤で欲しい方は、現状輸入盤のみになってしまうが、ココではアルバムの中身についてご紹介したい。

元々ピーター・フリーステットのソロ・プロジェクトが進化してスタートしたユニットゆえ、ピーターがすべてに於いて制作の中心になっていることは変わらない。その上でまず今回は、ジョセフがTOTOに時間を割かれて限定的にしか参加できなかったため、自ずとビルの存在がクローズアップされた。そしてジョセフの穴を埋めるため、マイケル・マクドナルドや、ビルの奥様タマラ・チャンプリンをフィーチャーした楽曲が収められる。心なしか、ピーターのギターが前面に出てくる場面も増えたように感じたが、本人はあまり意識してなかった様子。「そう? だとしたら、楽曲がギター向きだったんだよ」と素っ気ない。ポジション的にスティーヴ・ルカサーやマイケル・ランドゥのように弾きまくると期待されがちだが、彼自身はギタリストというよりも、「まずプロデューサー」というタイプ。「ギターが必要だと思えばギターを入れるし、キーボードが欲しければそうする」という。だからこそビルもピーターに全幅の信頼を寄せ、トラックの制作はほぼピーター任せ。彼がスウェーデンのホーム・スタジオにドラマーやベーシストを呼んでレコーディングしている。
「本当にウマイからね。あいつは筋金入りのクラシック・ウェストコースト好きで、それを原動力にしているんだ」(ビル)

典型的なTOTOスタイルの<Runaway Dancer>、ビルがストックしていたシカゴ meets ボビー・コールドウェル風のパワー・バラードでアルバム・リード曲になった<Between The Lines>、<Restless Love>はビルとランディ・グッドラムの共作曲で、ちょっぴりフォーキー・ソウル風。中期ビートルズっぽいアレンジは、ビートルズ・フリークのジョセフを意識したものだろうか?

<All The Love In The World>は今作のハイライト・ナンバーのひとつで、マイケル・マクドナルドとビルのデュエットだ。マイケルの奥様でAORファンにはお馴染みのエイミー・ホーランドもバックで歌っている。これに関してビルは「マジックが起きた」と発言。「曲が芸術へ変わる瞬間があった」と話している。しかもこの曲、アルバムが完パケる最後の最後でジョセフのヴォーカルを追加し、イントロ/アウトロにも手を加えた新ヴァージョンが完成。急遽、日本盤ボーナス・トラックに追加されることに。それこそ拙ライナーも慌てて校正したほどの、切迫詰まったタイミングで、だ。どうやらジョセフは今、ルークのソロ新作に借り出されているよう。もっとも後発でマスター納入に少し時間的余裕があった欧州盤は、こちらのトリプル・ヴォーカル版の収録に切り替えるらしい。日本盤だけに2ヴァージョンが入るなら、何処がどう変化したのか聴き比べも一興だろう。

ピーターがよくやる既発表曲のアップデイト版もいくつか入っている。<10 Miles>は2年前にヨーロッパでリリースされていた大々先行EPのタイトル曲で、ピーターとランディ・グッドラムが共作したメロウ・ミディアム。YouTubeなどで既に映像をご覧になった方も多いだろう。そのEPのカップリングが、ピーターとランディがジョセフを念頭に書き下ろした<Amandas Disguise>。ところが肝心のジョセフ不在で、ビルがトライしたら、コレがうまくハマったそうだ。今回のアルバム・ヴァージョンはリミックスで、終盤の楽器構成が変わっている。<All That I Want>も、CWF 1st 収録曲のリニューアル。BPMを少し上げ、ソリッドになってバンド感が強くなった。また本編ラストの<Sometimes You Win>は、11年作『WILLIAMS / FRIESTEDT』収録のニュー・ヴァージョン。原曲はJaR(ランディ・グッド&ジェイ・グレイドン)の『SCENE 29』(93年)の日本盤ボーナス・トラックで、今回は新たにビルのヴォーカルを追加し、ジョセフとビルのデュエット風に仕上げられた。

そしてもうひとつのポイントが、<Look Away>の最新ヴァージョンになるだろう。実はコレだけライヴ・テイクで、前回の北欧ツアーでは、レコーディングされている。シカゴのヴァイブを残そうとオリジナルのキーボード・パートを生かしたまま、ホーン・アレンジや終盤のギター・ソロなど新しい要素を追加し、ショウでは大きな反響を得たそうだ。この曲に対するコメントの中で、ビルはちょこっとシカゴに対する思いや自分の活動スタンスを吐露。そこにはビルの男気が表れているようで、かっこ良いコトこの上ない。まぁそれは、是非とも国内盤のライナーを読んでくだされ。

タマラのヴォーカルは <Price Of Love>で楽しめる。ビルと結婚38年、ソロ作もある強力なロック・シンガーで、タイプとしてはアン・ウィルソン(ハート)を少しR&B寄りにしてハスキーにしたような感覚。ビルのソロやCWFのツアー、ジェイ・グレイドンのツアーでも歌っていたな。「他の曲とは少し毛色が違うけど、タマラをフィーチャーした曲が欲しかったんだ」とピーター。

国内盤ボーナス曲3曲のうち、前述<All The Love In The World>以外の2曲は、EP『10 MILES』のカンプリングになっていた CWF 1st や『WILLIAMS / FRIESTEDT』収録曲のアップデイト・ヴァージン。

ズブの新録曲が少ないのは若干残念だが、ユニットの成り立ちや周辺事情を考えると仕方のないところ。オマケに新型コロナの影響で、秋頃には…と計画していた2度目のジャパン・ツアーも、先行きが見えなくなってしまった。それでも彼らは、自分たちの熱心なファンたちが日本とヨーロッパに多いことをよく知っている。是非、再来日公演実現へ向けて、皆さんで大いに盛り上げて欲しいところだ。