neil innes 1st

ビートルズ・フリークには縁の深いボンゾ・ドッグ・バンドやラトルズ〜モンティ・パイソンで知られるニール・イネス。昨年末に亡くなった彼が、再編ボンゾ・ドック・バンド解散後の73年に発表した傑作1st ソロ・アルバムが、ようやくオリジナルに準拠する形で初CD化となった。タイトル曲はオアシスの有名曲<Whatever>の元ネタとして訴訟問題になり、共作クレジットになった経緯もある。

ラトルズ〜モンティ・パイソンに絡んだ人ということで、ミュージシャン/コメディアン、なんて肩書きも頂戴しているイニスだけれど、如何にも職人気質の英国人シンガー・ソングライター、を感じさせる部分も多々あって。ボンゾ・ドッグの最初の解散直後に組んだザ・ワールドというバンドには、のちにキング・クリムゾンで活躍するイアン・ウォーレス(ds)もいて、プログレ寄りのシリアスなことを演っていた。なかなか器用な人なのである。しかしそれが成功せず、ボンゾ・ドッグ再編や、ポール・マッカートニーの弟マイク・マクギアを擁するグリムスに参加。それを経てのソロ・デビューだった。

参加メンバーは、グリムス仲間のアンディ・ロバーツ(g)やデイヴ・リチャーズ(b)、ジェリー・コンウェイ(ds)に、スプーキー・トゥースのマイク・ケリー(ds)、そしてパトゥ〜テンペストを経てラトルズにも関わることになるオリー・ハルソール(lead-g,organ)など。基本的に、多少のユーモアを交えつつも真面目でシンプルなポップ・ソング集になっていて、イニス本来の持ち味が全開。個人的には、初期トッド・ラングレンにも似た資質を感じるところ。トッドはピアノに向かいながら自らの首をロープに結ぶブラック・ユーモアをジャケに表現していたが、イニスの場合は、グリムスでも使っていたアヒルがトレード・マークになっていく。ロマンチックで美しいメロディを紡いだり、人をウキウキさせるロックン・ポップを演りつつ、アヒルの帽子を被って、股間に棒状のビニール風船。そんなお笑い仕様なのに、イニス自身の表情はどこか悲しげで…。セピア色でまとめられたアートワークも、まるでイニスの人物像を描いているよう。その象徴がタイトル曲なのだ。こうした繊細なタイプのアーティストは、無条件に応援したくなっちゃうな。

余談になるけど、実は新型コロナの外出自粛ムードの中で、カナザワはすっかりアヒル厨 になってしまった。行きつけのスポーツ・ジムも、トレーニング・ルームを備えた近所のコミュニティ・センターも、みんな休業。仕方なくココ2ヶ月、リモート・ワーク中の相方と早朝ウォーキングしているが、コースにしているサイクリング・コース脇の用水路や自然公園の池のアチコチにカルガモが生息していて、いつも愛嬌を振りまいてる しかも最近は子ガモ連れがいて、時にはサギも飛来。オマケにある所には、何処かの学校で飼われていると思しき山羊 まで疎開してきてて、ハイジ世代の相方はもうメロメロ 毎朝 和ませてもらっているワケだ。 それこそ、ディスカヴァー地元 状態。これはコロナ禍がなければ気づかなったことなので、憎きコロナも 悪いコトばかりじゃなかったみたい。そんなコトもあって、どうもイニスに親近感が湧いてたりして…

なおこのCD、最初に “オリジナルに準拠する形” と注釈をつけたのは、以前出ていたイニスのコンピレーションCDにココから多くの楽曲が収録されていたから。それをゲットした人はかなりのマニアだと思うけど、今回は多少の編集の甘さこそあれ、彼の初期シングルが大量ボーナス収録されるなど、価値ある内容。何よりジャケットはやっぱりコレでないと。名盤とは言えないまでも、愛すべき好盤であるのは疑いないな。