wailers_burnin'

な〜んか執筆でPCに向かっても集中力が上がらないし、身体も倦怠感でダルダル。スッキリ気分転換したいが、爆音でハード・ロックを聴く気分でもなく、そこで手にしたのがボブ・マーリー。直接 意識はしてなかったけれど、自分の中に、全米中で勃発している人種差別抗議デモへの共感が眠っているのだろう。ちょうどボブ・マーリー生誕75周年でもあるそうで、今月末には紙ジャケ盤11作がアンコール再発されるとか。カナザワはひと通り持っているが、手持ちの紙ジャケ/デジタル・リマスター盤シリーズは01年仕様。あぁ、Time flies...

さて、この『BURNIN'』は73年に発表されたもので、アイランドから英米に紹介されるようになって、まだ2枚目。国内盤表記はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズだけど、正確にはまだザ・ウェイラーズ名義。つまりボブ・マーリーがセンターに立ちつつも、その両隣にはピーター・トッシュとバニー・ウェイラーがいる。完全にボブ主導になるのは、次の『NUTTY DREAD』からだ。

『BURNIN'』のポイントは、言うまでもなく、エリック・クラプトンで有名になった<I Shot The Sheriff>の存在。そしてアルバム冒頭の<Get Up, Stand Up>も、ボブの代表曲として名高い。ただ75年の歴史的名盤『LIVE!』を先に聴いていると、その軽やかさに、些か拍子抜けしてしまうかもしれない。『LIVE!』は世界的売り出しのために、かなりロック色が強くエッジィに仕上げてあるから。でも『BURNIN'』の原曲だと、<I Shot The Sheriff>はオリジナル・ウェイラーズの持ち味だった3人のコーラスが幅を効かせているし、ボブとトッシュが書いた<Get Up, Stand Up>は、2人の掛け合いがキモ。そういう意味では、初期ウェイラーズの魅力を詰め込んだ、最後のアルバムとも言える。ラスタとしてのコダワリが強いバニーのファルセット・ヴォーカルだって、ボブとは違った味があったのに、それも最後だ。クラプトンが<I Shot The Sheriff>を大ヒットさせてウェイラーズに脚光を当てたことで、3人の思考のズレが表面化し、バンド内のバランスが崩れてしまった。

個人的にも、ボブ・マーリーを聴こう!なんて時は、完全盤が出た『LIVE!』が、もしくは『EXODUS』や『KAYA』を手にすることが多く、『BURNIN'』を聴いたのは超久しぶり。記憶の中の音はもっとキレてた気がしたが、レベル・ミュージックの代表格とされつつも、それ以前にポップスとして成立しているのが彼らの音楽なのだな。

今やレゲエ=ラヴァーズ・ロックで、夏が似合うカリブのリゾート・ミュージックとか、チル・アウトできるまったり系クラブ・サウンドとか。ボブもピースフルなワールド・ミュージックの典型として、しばしばお気楽に取り上げられる。でも<I Shot The Sheriff>というのは、実は正当防衛で保安官を撃ってしまったと歌う曲で、“だけど彼は法律の代行者じゃなかった” と繰り返される。タイトル曲<Burniun' And Lootin'>でも、“今夜 すべての腐敗を焼き尽くせ” と歌われる。元来レゲエとは、そうした戦う社会派メッセージ・ソングだった。

Black Lives Matter.