immidiate family

キャリア50年前後のジイさんミューシャン集団に、今更新しいコトなど誰も求めやしない。でもロートルたちの慰みモノみたいなコトを演ったら、「何じゃコリゃ!?」と口を揃えて文句を言う。悪戯に耳が肥えたオヤジのロック・ファンほど、面倒臭い奴らはいないものだ。もちろん自分を含めてネ。そもそもこのアルバムも、もっとユル〜いノリになると思っていた。2018年、19年の来日公演(名義は微妙に違うが)は、確かにみんな元気ハツラツで、年齢を感じさせないパフォーマンスだったけれど、この初のオリジナル・アルバムでの彼らは、何とビックリ 更にパワー・アップしたところを披露している。

自分のバンドを組んで積極的なライヴ活動を行なうようになったダニーの元に、ワディ・ワクテル、リー・スクラーやラス・カンケルといった旧知のメンバーが参集。ライヴ・アルバムや映像作品にもなったキャロル・キング&ジェイムス・テイラーの『トルバドール・ツアー』で、元セクション組が旧交を温めていたコトもあるのだろう。まずはダニー・コーチマー&イミディエイト・ファミリーとして2度来日。ダニーを中心とした関連曲のカヴァー・アルバム『HONEY DON'T LEAVE L.A.』と『LIVE IN JAPAN』をリリースした。それに続くのが、今回の新作『TURN IT UP TO 10』である。

まず名義からダニーの看板が外され、シンプルに "The Immediate Family" になっている。業界的には、最初はバンド名義でデビューしても、名の通ったフロントマンや目立つメンバーがいれば、通りがよくなるように個人名を掲げたりするもの。ところが彼らはその逆を行った。それはすなわち、バンドとしての一体感、メンバーたちのコンビネーションの良さをアピールするもの。グループ内では、やはり他のメンバーがダニーに一目置いているはずだが、そのダニーが率先して前に立つのではなく、一歩引いてみんなと並列に並ぶところに、このバンドの強みがある。プロデューサーとして多くの実績があるだけに、自分がどういうタイプかを弁えているのだろう。むしろ やんちゃなワディの方が目立つくらい。そのバランス感がバンドらしさを自然に演出している。

今作に収録された12曲は、すべて彼らのオリジナル。<Slippin' And Slidin'>と<House Will Fall>は『LIVE IN JAPAN』にも収録されていたので、きっと耳馴染みがあるはず。「Divorced」と「Time To Come Clean」「Fair Warning」はジャパン・ツアーでもセットリストに入っていた(日替わり含む)。<Damage>はリンダ・ロンシュタット、<ThingsTo Do In Denver When You're Dead>はウォーレン・ジヴォンで既出。個人的には、ダニーが書いた甘酸っぱいスロウ・チューン<Thing Of The Past>にヤラレている。ジャクソン・ブラウンあたりが歌いそうな気がする曲だけど、歌メロが印象的なんだな。

殊更に「サイコー」と強調しなくても、みんなの気持ちがひとつになれば、普段着のままで演っても充分ご機嫌で最強のバンドになる。それがこのイミディエイト・ファミリー。ウエストコースト・ロックの魅力は、きっとそういうトコロにあるのではないかな?