david sanborn_voyeur

気持ちの良いクロオーヴァー/フュージョンを爆音で聴きたくなって、手に取ったのがコレ。サンボーンの通算6作目、81年作『VOYEUR』。我々世代には『夢魔』といった方が通りがイイかな? サンボーンを知った最初は、ロック・アーティストのアルバムでよくソロを吹いているサックス奏者として。多分トム・スコットの次ぐらいに名前を覚えたと思うけど、リーダー・アルバムをシッカリ聴いたのは、80年作『HIDEAWAY』が最初。そのあと出たのがコレだった。サンボーンの一番の愛聴盤は後続の『AS WE SPEAK』だが、この3枚には並々ならぬ思い入れがある。ただし落ち着いて聴くのは、かなり久しぶり。

この時期、サンボーンがブレイクしたポイントは2つある。ひとつは『HIDEAWAY』から組んだプロデュース・チームのレイ・バーダニ&マイケル・コリーナ。後々マイケル・フランクスやボブ・ジェイムスなどでも活躍し、コリーナはソロ作も出すが、CM音楽の制作者だった彼らをステップ・アップさせたのは、他ならぬサンボーンだったようだ。もうひとつのポイントは、言わずと知れたマーカス・ミラーの重用。『HIDEAWAY』に1曲だけ参加していたマーカスは、当時はまだスラップの上手い若手超絶ベーシストとして頭角を現してきたばかりだった。そのマーカスに作曲などトータルな才能を見出し、実質的パートナーに引き上げたのも、サンボーンが初めて。全7曲中でサンボーンとマーカスが各3曲ずつ書き下ろし、1曲は共作。しかもサンボーン楽曲3曲中2曲でマーカスはベース・ギターを手に取らず、モーグ・ベースを弾いている。しかも自作曲ではギターや鍵盤も。

プロデューサー的側面を前面に出してからのマーカスなら、こうしたマルチ・プレイヤーぶりにも納得。だが世がまだ、 “マーカスのスラップがスゴイ” と騒ぎ始めて間もない頃のコト。かく言う自分も、当時はベースの方ばかりに耳が行ってて、ここで既にマルチ・プレイヤーの片鱗を覗かせていたことは随分後になって気づいた。再起に臨んだマイルス・デイヴィスがマーカスを呼んだのも、同じ81年。きっとマイルスの慧眼も、マーカスの豊かな才能をシッカリ見抜いていたのだろう。もっともカナザワ個人的には、マルチ・クリエイター的になってからのマーカスには、正直さほどの魅力を感じていないのだけれど…

ソロ・アーティストとしての人気を不動にした80年代初頭のサンボーンゆえ、彼のブロウは申し分ナシ。このアルバムでは、2曲に参加しているバジー・フェイトンのギター・ワークが素晴らしく、オープナー<Let's Just Say Goodbye>のタメの効いたグルーヴは、どうもフルムーン的に感じる(ドラムはスティーヴ・ガッド)。またマーカス提供のライヴ定番曲<Run For Cover>も強力で、ココにはトム・スコットも参加した。最近のサンボーンはあまり聴き込んではいないが、この当時はまさしくワン&オンリーの魅力を放っていた。