moonpie

ムーンパイ…? チョコパイとかエンゼルパイなら知ってるけど…、と思ったアナタ、貴殿はただの甘いモン好き(←自分)。このムーンパイは、レア・グルーヴ方面から発掘されたアフリカン・アメリカン1人を含む8人組大型グループ。オリジナル・ヴァイナルはディガー感涙の激レア盤で、AORファンにも好まれそうな洗練されたシティ・ソウルを聴かせてくれる。もちろんコレが世界初リイシュー! スティーヴィー・ワンダー、タワー・オブ・パワー、アース・ウィンド&ファイアーにスティーリー・ダンのカヴァーを演っていると聞けば、きっと誰もが興味をソソられるだろう。ちなみにシティ・ソウルのガイド本には載っておらず、解説を担当した不肖カナザワも、音を聴くのは今回が初めてだ。

メンバーの中には女性もいて、実質的にはブルー・アイド・ソウル・グループといって良さそう。テネシー州ナッシュビルを拠点に活動していたらしく、レコーディングはアラバマ最大の都市バーミングハムにあるスタジオ、サウンド・オブ・バーミングハムで行なっている。プロデュース/エンジニアを務めるグレン・ウッドは、フレデリック・ナイト『I'VE BEEN LONELY FOR SO LONG』(73年)、サム・ディーズ『THE SHOW MUST GO ON』(74年)と、実力派ソウル系シンガー・ソングライターのアルバムに揃って参加していた御仁。なるほど、道理でクロい音なワケだ。しかもホーン・セクションを擁していて、ちょっとフュージョン寄りのジャズ・センスを覗かせたりする。

オープナーはタワー・オブ・パワーの75年作『IN THE SLOT』収録の<Ebony Jam>。ブレイクビート・ネタとして人気のインスト・チューンで、TOPの曲らしくダイナミックなホーン・セクションを再現している。でもそれ以上に耳を奪われるのは、抜群に小気味良いリズム隊のシンコペイション・リフレイン。特にグルーヴィーなベースを弾き倒すのが唯一の女性メンバーというのが衝撃的だ。

アルバムのハイライトは、スティーヴィー・ワンダー<You Are The Sunshine Of My Life>のカヴァー。エレガントなボサ・アレンジが、エレピ・ソロの後ろで徐々にヒート・アップし、サンバに変幻していくのが秀逸である。終盤はかなりヒネったコード進行で、なかなか斬新。続いて登場のスティーリー・ダン<My Old School>では、一転してオリジナルに忠実なアレンジを披露する。他にもコモドアーズ<Funny Feeling>、レス・マッキャン&エディ・ハリスの名ライヴ『SWISS MOVEMENT』から<Cold Duck Time>、そしてブラザーズ・ジョンソンというよりクインシー・ジョーンズ feat.レイ・チャールズ&チャカ・カーンとしてお馴染み<I'll Be Good To You >を軽やかに。クリエイティヴ・フォースが元曲、アース・ウィンド&ファイアーやディオンヌ・ワーウィックの名カヴァーでお馴染みの<Can't Hide Love>は、サスガに少々荷が重かった気がするが、きっとライヴではウケの良かったレパートリーなのだろう。

でもそれを補って余りあるのが、実は数少ないオリジナル曲。ワイルド・チェリーを髣髴させる<Do You Wanna>、アゲアゲのファンク・チューン<Nesila Funk>と、なかなかに聴かせドコロを掴んでいる。アルバム・トータルではローカル発信らしいB級テイストが漂うが、同時に70年代らしいハンドメイド感、ヴィンテージな香りが詰まっていて、レア・グルーヴとしての親近感を放つ。

なおプロデュースのグレン・ウッドは、80年になると、アトランタの男性デュオ;KORONA ()に関わりを持つ。この KORONAは、<Moonlight Feels Right(恋のムーンライト)>(76年/全米3位)で知られるスターバックの中心人物ブルース・ブラックマンが、バンド崩壊後に新たに組んだもの。そしてそのアルバム・セッションには、ムーンパイの元メンバーが複数参加している。またムーンパイのホーン隊にはトム・スタイプという人物がいて、DiscogsではCCM系プロデューサーと同一人物という記述が。そこで拙解説でもそれを踏襲しつつ、ちょっと微妙…と疑問を投げ掛けたが、その後の調査で、やはり別人だったと判明。AMGと違って信頼性の高いDiscogsながら、やっぱりこういうことがあるので、ウラをとることは重要なのだ。

ちなみにカナザワは、エンセルパイよりチョコパイ派です