paul_band on the run

真綿で首を絞められているような、ジワジワとイヤ〜な感じで増えているコロナ感染。そんな中、約3ヶ月ぶりにクルマで都心へ出向き、某レコード会社で打ち合わせ。執筆や選曲の仕事は家に引き篭もっていてもできるけど、人が集まり、フェイス・トゥ・フェイスで話をするからこそスムーズに進むコトがある。今回のミーティングも晩秋に向けてのプロジェクト。コロナ自粛下にも関わらず、 AORやシティ・ポップ関係でいろいろと面白いプロジェクトが動き出している。ライヴ関連はまだ戦々恐々とはいえ、なかなかイイ感じで7月がスタートした。

帰宅後はポール・マッカートニー三昧。今月末に97年作『FLAMING PIE』の豪華ボックスが出るため、各音専誌で特集が組まれるが、そのひとつに寄稿するため、ほぼすべてのソロ作を摘み食いで聴き漁っている。CDはほぼ揃っているけど、こういう時にサブスクリプションはメチャ便利だな。

ざっと聴き通して想いを新たにしたのは、カナザワにとってのポール名盤は、やっぱりウィングス時代の『BAND ON THE RUN』(73年)と、ポール&リンダ・マッカートニー名義で出した『RAM』(71年)の2枚だと。どちらも名曲揃いの上、アレンジや構成が素晴らしく、アルバムとしての完成度がすごーく高い。もちろん評価もシッカリと定まっている。逆境に強いポール、という謂れであることも広く知られるところだろう。

それに対して、一般的評価が低いのに愛着を持って支持したくなるのが、ウイングスの1枚目『WILD LIFE』(72年)と、ウイングス全盛期の76年作『WINGS AT THE SPEED OF SOUND』だ。メンバーを集めてウイングスを立ち上げ、アッという間に作ってしまったという粗っぽくもネイキッドな魅力を放つ『WILD LIFE』、メンバーが固まって大きいツアーをこなした後、他のメンバーにもチャンスを与えてバンドのレヴェル・アップを目指した『SPEED OF SOUND』。収録曲に出来不出来の差が大きい両アルバムながら、だからこそポールの天賦の才、メロディメイカーとしてのスゴさがストレートに伝わってくると感じる。

…と同時に、自分にとってポールの存在が重要だったのは、概ねウィングス時代までだったな、と実感。その後も<Say Say Say>とか<My Brave Face>のように好きな曲を出してくれるものの、どうも散発的で、ソロ初期やウイングス時代に追いつくほどのアルバムはなかった。70歳を超えても創作を続け、元気にワールド・ツアーする姿にはリスペクトを惜しまないが、やっぱり若い頃のようなアイディアは出にくくなっているのだろう。

なので、今までずっと買い続けてきた豪華ボックスも、今回の『FLAMING PIE』は断念決定。CD+DVD7枚組で定価38,000円、+アナログ4枚つきコレクターズ・エディションは128,000円って、ちょっと尋常ではないよ。ほぼ同時に出るプリンス『SIGN "O" THE TIMES:Super Deluxe Edition』は、8CD+DVDの9枚組で18,000円。この時期、次第にアーティスト・パワーが落ちてきていたポールながら、それでも『FLAMING PIE』では結構頑張っていた。けれどこのコスパでは、もう 2CD スペシャル・エディションで充分かと。それより、特典でしか出ていないライヴ盤『WINGS OVER EUROPE』を、早く単独リリースしてくれよ〜