paris match 12

ちょっと出遅れたが、paris match のニュー・アルバム『ROUND 12』を手にした。イヤ、サブスクリプションではひと足先に聴いていたが、ココで紹介するのは、やはりフィジカルを入手してから、と思っていて。2015年末に3年ぶり新作として出た『11』から数えると、今回は実に5年ぶり。つまり8年で3枚という寡作状態にある。でもまぁ ライヴはコンスタントにやっているし、昨年末には周年ベストもあったから、それほどお久しぶり感はない。ヴォーカルの(ミズノ)マリちゃんも、kydの新川博さん率いるシンキーズと何度かツアーに出ていたしね。

ただ、やっぱりこの5年という空白の歳月にはそれなりの重みを感じるワケで、安定の paris match サウンドに触れて ようやく安心したというか。もちろん美学を持った彼らのコトだから、中途半端なモノになりそうだったらリリースなんかしないと思うけど、若干のシフトチェンジならあり得るかと思っていた。特に牽引役の杉山洋介にとっては、常連のサポート・ギタリストだった松原正樹が逝った(16年2月没)ことが大きなショックだったらしく、なかなか新作に向かうモチベーションが上がらない、という噂も耳にしていた。でもそれも杞憂に終わりました。

そうした事情が関係しているかどうかは分からないが、このニュー・アルバムの作風が、 paris match にしては落ち着いている感があるのは確か。オープニングの<さよならシーサイド>のイメージから来るのだろうか、彼らの従来作に比較すると、派手な作りではないように感じた。でもその代わりにジワジワくるというか、より普遍的で練り上げられたメロディが連なっているようで、ここ数作では一番自分にフィットした。正直なところ近年作は、いつも変わらぬ paris match クオリティを確認すると安心してしまい、深く聴き込むような付き合い方をしてこなかった。でもコレは逆に、何度でも繰り返して聴きたくなるサムシングがある。「神は細部に宿る」ではないけれど、杉山さんを奮起させた何かがあるのかも…? もちろん近作がイージーに作られていたワケではないので、勘違いはしないで欲しいのだが。

クールで洒脱な paris match テイストは、マリちゃんのヒンヤリ涼やかな歌声、パッションを内に秘めたヴォーカル・スタイルが健在な限り、変わることはないだろう。そうしたブレない個性を、何でもできてしまうサウンドメイカー:杉山がどう料理していくかが、彼らの魅力だ。どちらも不器用なら信じる道を我武者羅に進むしかないし、2人揃ってスイスイ変身できるチームなら、もうとっくに違うフィールドにいることだろう(善し悪しは別にして)。昨今のハヤリである78〜80's シティ・ポップへの目線、シック風味のブギー・サウンドもあって、なるほどと思わせてくれる。でもその音の感触は、デビュー当時のライトなタッチから、いつしか20年のキャリアを漂わせた滋味掬するべき音へと変化した。キラー・チューンがない代わりに、アルバム丸ごと付き合いたい、そんな作品に仕上がっている。

ちょっと笑っちゃうようなイラストのアートワークは、一見、paris match らしくはない。気合いで挑む最終ラウンド、なんて泥臭さは、本来彼らには無縁であって欲しいものだ。しかし、内なる苦悩に満ちていたはずの5年のブランクを克服した杉山を思えば、この図柄もまた なるほどと思える。それを茶化せる余裕も生まれたのだろう。新しい paris match…といっては大袈裟すぎるけれど、12ラウンドだからといってゲーム・オーヴァーではないはず。もともとボクシングは 15ラウンドまであったのだからして…