the buoys

今日はAORのルーツ的なバンドをご紹介。しかも、異なる人脈の2組のアーティストの過去を辿っていくと、意外にも接点があったというネタである。ただし音的にはAORからほど遠く、ハード・ポップなアメリカン・ロック or パワー・ポップにサイケな風味を振り撒いたような、ちょっと形容しがたい内容。曲自体は悪くないし、実際ヒットも飛ばしているのに、今イチ捉えどころがなくて、バンドとしては成功しなかった。でも後年の彼らを知ると、あぁ、ナルホドね〜と。ちなみに The Buoys (ザ・ブーイズ)の Buoy とは、港などに浮かんでいる標識=浮標のこと。救命ブイ、なんてのもありますね。

チャート面でのブーイズは、71年に全米17位を記録した<Timothy>で知られている。作編曲はルパート・ホームズ。そう、<Escape>や<Him>の大ヒットで知られる、あのAORシンガーだ。彼のキャリアを知る人ならお分かりだろうが、ルパートはソロ・デビューする前に、音楽出版社の専属作家/ミュージシャンとして下積み積んでいた。そしてロン・ダンテのスタジオ・ユニット:カフ・リンクスで、69年に<Tracy>を全米トップ10(最高9位)に。そのサイド・プロジェクト:ストリート・ピープルでは、70年に<Jennifer Tomkins>をトップ40(最高36位)に送り込んでいる。それに続いたのが、このブーイズの<Timothy>だった。

60年代半ばにペンシルバニア州の北東ワイオミング・バレーで結成された5人組ブーイズ。メンバーはみんなミッド・ティーンで、69年になってセプターと契約し、シングル<These days>でデビュー。そのアレンジを手掛けたジュリアン・ギルこそ、後のルパート・ホームズだった。<Timothy>は70年リリースだが、最初はまったくの不発。年末からようやく火がつき、71年になってやっとチャート・インした。このヒットでアルバム・ディールを獲得したが、実はその時点で既にメンバー2人が離脱。レコーディングを前に、急遽陣容を整えた。それがジャケに映る5人で、この中にオリジナル・メンバーで<Timithy>を歌っていたビル・ケリー(g,vo)、後から加入したジェリー・G・ルジック(b,vo)がいる。収録曲10曲は、ルパートの提供曲とメンバー共作曲が半分づつ。リード・ヴォーカルはドラマー以外の4人が交替で受け持った。

アルバムからは続いて<Give Up Your Guns>と<Bloodknot>をシングル・カット。いずれもルパートの曲で、彼らしいメロディが随所に覗く。でも一方でハードなビートを唸らせ、ハープシコードが曲を先導したり、ヴァイオリンがリードを取るなどのこの時代らしいサイケな展開も。この辺りはルパートがオーケストラ・ルナとかセイラー、ストローブス、スパークスあたりを手掛ける流れに繋がる部分かもしれない。その後ブーイズはポリドールへ移籍し、引き続きルパート制作で3枚のシングルを発表。日本でもボーイズ名義でシングルを出した。しかし移籍後はアルバム制作に至らず解散。ケリーとルジックはシカゴのダニー・セラフィン、マデュラのホーク・ウォリンスキー(後にルーファス)と手を結び、78年にジェリー=ケリーとしてデビュー。これが80年にダコタへと進化する。ダコタは80年代に未発表曲集を含む3作をリリース。これはAORファンも広く楽しめる内容だ。ただし90年代後半からのリユニオン作品群は、メロディック・ハード路線で賛否が割れそう。カナザワの好み的には、NGではないものの、正直あまり面白くない。しかもルジックは今年4月に亡くなっていて残念。

対してこのブーイズのワン&オンリー・アルバムは、過去何度か輸入盤でCD化されたものの、最近はかなりのプレミア価格になっていた。それが今回、韓国 Big PInkで紙ジャケ化。その国内仕様盤が流通し始めた。プレAORとも言えない作品だけど、ボーダーレスに聴けば興味深い作品なのは間違いないな。