wings_venus & mars

月初めに、ポール三昧で『 ABND ON THE RUN』聴いてます、と書いたばかりだが、今また再びポールで。前回は執筆のための いわばネタ選びとして広くポールのアルバムを聴き漁ったが、今回は直接PCに向かって、曲を聴きながらキーボードを叩いている。書くのはアルバムではなく、楽曲単位。なので今回は、75年に出たウイングス『VENUS AND MARS』収録曲のいずれかについて、ちょっとした原稿を書いていることになる。ま、他のアルバムからの楽曲についても、いくつか書いてるけれど。

『BAND ON THE RUN』制作のためのラゴス行きを前にメンバーが相次いで脱退し、ポールとリンダ、デニー・レインの3人だけになったウイングス。しかしこのバンドは、ポールがライヴを演りたくて組んだワケで、早々にメンバー補充が図られた。そこで新たに、若いながらもキャリア豊富なジミー・マッカロク(g)とジェフ・ブリットン(ds)が加入。アビイ・ロード・スタジオ、そしてニューオリンズにあるアラン・トゥーサンのスタジオで、このアルバムの制作が始まった。ところがバンドに馴染めなかったブリットンがレコーディング中に脱退。その穴を埋めたのが、米国人ドラマーのジョー・イングリッシュだった。後にシー・レヴェルやキングフィッシュのメンバー、CCMのソロ・アーティストとして名を上げていくジョーだが、この時はまだ、まったく無名のセッション・ドラマーに過ぎなかった。

一般的にウィングス最充実期が、この5人、ポールとリンダ、デニー、ジミー・マッカロクにジョー・イングリッシュというラインアップとされる。『VENUS AND MARS』『WINGS AT THE SPEED OF SOUND』『WINGS OVER AMERICA』、そして『LONDON TOWN』の完成までが、この並び。中でもこの『VENUS AND MARS』が、一番充実したスタジオ・アルバムだろう。ファースト・カットの<Listen To What The Man Said(あの娘におせっかい)>が全米首位/全米6位。デイヴ・メイスンやトム・スコットの参加、歌詞の"Kisses Girl"のところでポールがマイクにキスしている、など、話題性も豊富だった。アルバムのトップで当時のワールド・ツアーでもオープニング曲となった<Venus And Mars 〜 Rock Show>が、3枚目のシングルで全米12位。これも歌詞にジミー・ペイジが登場したりして、ロック・ファンは喜んだものだ。両曲に挟まれた<Letting Go(ワインカラーの少女)>はマイナー調で、トップ40入りがやっとという状況だったが、滋味溢れるところがあって通受けした。ちなみにこの曲、アルバムとシングルではテイク違いで、アルバムだとブリットンがドラム、シングルはジョーが叩いている。

ポールがバンドの結束を固めるべく、デニーやジミーにも曲を出させて歌わせたのもココから。熱烈なポール・ファンは「余計なことすな オレたちはアンタにしか用はない」ってなトコロだったが、ジミーの<Medicine Jar>は好きだったな。20歳でドラッグ・ソングなんか歌ってるから早々に逝っちゃったけど、才能は確かだった。でもアルバム全体だと、どうなんだろう? <Call Me Back Again>のようなニューオリンズ録音らしいR&B曲や、ポールの得意なボードヴィル<You Gave Me The Answer>があるとはいえ、個人的には、少々小振りにまとまっちゃっている気がする。次の『...SPEED OF SOUND』はアルバムとしてはまとまりを欠くが、一方で<Silly Love Songs>や<Beware My Love>みたいな大曲、キラー・チューンがあった。でも『VENUS AND MARS』はライヴを睨んでいるというか、エンターテイメント性を重視した作風だと感じる。とはいえ、WINGS 最終作『BACK TO EGG』になってしまうと、どうもサーヴィス過剰に思えてしまい…。

そもそもポールに関しては、『RAM』とか『WILD LIFE』とか、シンプルな初期作の方が自分の好みに近い。『BAND ON THE RUN』は華やかなサウンドでも、決して音数が多いワケではなく、選りすぐられた必要最低限の音が無駄なくソリッドに鳴っている。それに比べると『VENUS AND MARS』は、ニューオリンズに来て少しムードに絆されたのか、ワキが甘い感じ。でもそれがポールらしい部分でもあるので、この程度なら全然イイのだけれど。

でも改めて聴いて思ったけれど、カナザワが大好きなロック・チューン<Junior's Farm>がココに収録されていたら、個人評価はもっともっと上がっていただろうな。

.