kansas_2020

アメリカン・プログレッシヴ・ハードの雄:カンサスの4年ぶりのニュー・アルバムは、ズバリ傑作。デビューから46年、オリジナル・メンバーはリーダーのフィル・イハート(ds)と眼帯ギタリストのリッチ・ウィリアムスの2人だけなのに、まるで全盛期のような勢いあるサウンドが蘇っている。今の編成になってからはまだ2作目。カナザワが解説を書かせて戴いた2016年の前スタジオ作『THE PRELUDE IMPLICIT(暗黙の序曲』も、よくココまで復活してきたな、と思わせてくれる出来だったけれど、これはそれを軽く凌ぐ出来映えだ。

この手のアリーナ・ロック、日本でいう産業ロック系グループは、一時 軒並み苦戦したり解散していた。それがジャーニーのアッパレな復活劇に影響されたか、次々に勢いを取り戻してきて。でもヨリを戻しても、なかなか長続きしないのが実情。スティーヴ・ペリーのクローンみたいなシンガーを加入させるウルトラC(古〜い表現)で、他のバンドの好サンプルになった当のジャーニーでさえ、再び内紛劇に見舞われていて、新しいラインナップでレコーディング中という新作の中身が気に掛かる。ベテラン・バンドゆえそれなりの作品に仕上げてくるのは明らかだが、傑作レヴェルにまで到達できる例は決して多くない。でもカンサスは、それをやってのけた。

カンサスがそれほど結束を固めたのは、前作リリース直後から、発売40周年を迎えた『LEFTOVERTURE(永遠の序曲)』再現ツアーを17年いっぱい、そして18年後半から19年末までは、次の『POINT OF NO RETURN(暗黒への曳航)』40周年ツアーを敢行。途中でキーボード奏者の交替はあったものの、それは物ともせず、19年12月には両方のアルバムを全曲披露するスペシャル・ライヴで大々的な周年ツアーを打ち上げている。その足かけ4年に渡る過酷なツアーを通じて、新生カンサスの一体感が生まれたのは容易に想像がつくところ。17年末には、『LEFTOVERTIRE LIVE AND BEYOND』なるライヴ盤も出していた。

特にスバラシイと思うのは、生え抜きのメンバー2人がバンドを牽引するのではなく、16年に加入したギターのザック・リズヴィがイニシアチヴを握り、ほとんどの曲作りとプロデュースを担当していること。それを補完したのがまた、ツアー途中から加入したトニー・ブリスリン(kyd,vo)。イハートとリッチ・ウィリアムスはコ・プロデューサーとなって、リズヴィのサポートに回っている。これはすなわち、若手メンバーに主導権を渡しつつ、そのエネルギーでカンサスの看板を引き継いでもらおう、ということ。若い世代を入れても古株が悪戯に頑張ってしまう老害バンドが多い中、こうしたディレクションを実践できるカンサスは、ホントに見事としかいう他ない。

USではマルチ・チャンネルの2枚組も出ているそうで、思わず食指が動いてしまいそう…

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