high red_live

このコロナ禍でライヴが組めず、否応ナシに配信ライヴに流れているアーティストたちと音楽業界。きっとコロナ後には、新しいライヴ・ステージのお届け方が形成されているのではないかと思うが、そんなトコロに、動画も何もなく、ひたすら音だけという原点に立ち返ったライヴ・アルバムが登場した。超絶シンプルだけど、パフォーマンスはメチャクチャ濃厚。それが、2015年に我が【Light Mellow Searches】@P-VINE シリーズ第1弾として紹介して静かに熱い支持を得たノルウェーの4ピース・ブルー・アイド・ソウル・バンド、ハイ・レッドのライヴ盤『ONE NIGHT ONLY』である。

ジャケを見てお分かりのように、元々の4ピースに1人加わってクインテットに。その新メンバーが、オーレ・ブールドのバンドのギタリスト:マーカス・ライルハウグ・ヨハンセン。バック・コーラスにもオーレ・バンドのラーシュ・エリック・ダールが参加している。そうそう、元を正せばカナザワがハイ・レッドの存在を知って日本に紹介したのも、ラーシュが「こんなレコーディングに参加したんだ。スゴくいいバンドだよ」と教えてくれたのが最初だった。

ライヴ録りは昨年4月末、オスロのハー・ニルセンというメンバーお気に入りのクラブにて。彼らによれば、「小さな会場だけど、そこは僕らにとってベイクド・ポテトみたいな場所」とのこと。ステージが近いのだろう、テンションの高い濃密な空気が、このライヴ盤からもダイレクトに伝わってくる。まだオリジナル・アルバム1枚しか出していないので、そこからの楽曲にカヴァー・チューンを取り入れてのセットになるが、それがジョン・クレアリー<Smile In A While>、ソウライヴ<Too Much>という、彼らのセンスを窺わせるナイスなチョイス。
「どちらも僕たちのライヴで長年演奏してきた曲なんだ。だからライヴ盤に入れるのは自然なことに思えた。特にソウライヴは、僕たちのフェイヴァリットだよ」

一番の聴きどころは、シンガー:アダム・ダグラスの豪快な歌いっぷり。ソウルフルなスタイルだが、声量の豊かさ、ヴォイス・コントロールの巧みさが別格で、それが型にハマらぬ奔放さによって物凄いエナジーを放出する。なんというか、声が余っちゃてる感じ。白人なのに、ゴスペル仕込みのアフリカン・アメリカンみたいな押しの強さがある。彼の全力パフォーマンスに呼応するように、バンドもグイグイとアグレッシヴなプレイを展開。大バコのエンターテイメント・ショウとは違って演奏がすべてというライヴ・ハウスでの公演だけれど、大物によるパッケージ・ショウの何十倍もの名演・名唱がギュッと濃縮されている。まさに一期一会。

何故まだ2枚目にして、もうライヴ盤なのか、その辺の事情はたっぷり解説に書いたので省略するが、国内盤には、17年にデジタル・リリースされたシングル扱いの2曲、<Beyond The Line>と<Shot Across Your Bow>もボーナス収録されているので、お聴き逃しなく。

動く映像があると、人間の意識は自ずと耳より目に持っていかれるもの。なのでハイ・レッドのような演奏勝負のバンドは、こうした音だけのライヴ作品の方が、その魅力が伝わりやすい。70年代にたくさんのライヴ名盤が生まれたのは、きっとそういうコトなのだと思う。そうした古き佳きライヴ作品の在り方を思い出させてくれる生録アルバム。画がないから…と敬遠しては、佳き音楽が内包している「熱」を知らずにいることに等しい。