kazushi inamura

カナザワもお世話になっているULTRA-VYBE / Solid Recordsが、名盤1000円シリーズ【邦楽編】を限定展開中。シティ・ポップ系の名盤や隠れアイテムがいくつか入っているので、未入手の方はこのタイミングで是非。今日はその中から、“北海道のシュガー・ベイブ” と称された稲村一志と第一巻第百章の77年デビュー作『FREE FLIGHT』を。“喫茶ロック” の括りでの初・紙ジャケCD化が02年。カナザワはその時に初めて聴いたのだけれど、解説によれば、近年の再評価はキッカケは、当時のプロモ盤を模した2015年のアナログ・シングル再発『二月の匂い(c/w イースト・ナエボ)』なのだとか。あら、それって 拙企画【Light Mellow 和モノ45】じゃないの〜。もっともアレは、14年に亡くなった稲村追悼企画でもあって…。その後ショーボートの発売権移動があり、18年にULTRA-VYBEがリイシュー。更にこの廉価再発となった。

シュガー・ベイブのフォロワーというと現在では、当時は学生バンドで近年ディグされた so nice が有名になっているけれど、稲村の方は早くも73年に、第一巻第百章としてアシッド・フォーク的1作目を自主リリース。その後 大滝詠一と知り合い、ナイアガラ・レーベルからのリリースも本気で検討されたというから、それこそ山下達郎に肩を並べるほど高く評価されていたことになる。もしかして足りなかったのは、地の利と優れたバンド・メイト、そして運ぐらいだったか…

実際このアルバムの頃になると、第一巻第百章とは名ばかり。実質は稲村のワンマン・プロジェクトと化していて、現地の友人たちを多数招集してレコーディングが行われている。その分、楽曲自体の魅力にウェイトが掛かるワケだが、“北海道のシュガー・ベイブ” という看板に偽りはナシ。先の<二月の匂い>だけでなく、<淋しがりや>や<恋をするなら>といったグルーヴ・チューンをシティ・ポップ・フリークが初めて耳にしたなら、それこそイチコロだろう。後者のインスト・パートは、まるでラムゼイ・ルイスの<Sun Goddes>(つまりアース・ウインド&ファイアー)だし… スインギーな<今のままなら>は、タツロー氏なら<ラスト・ステップ>。インスパイアされたのは明白だけど、曲によっては細野系チャンキー・サウンド狙いや夕焼け楽団的作風もあって、なるほど北の地でも同時代的な動きがあったことをハッキリ教えてくれる。

このアルバムが作られた直接のキッカケは、75年にヤマハ主催のポプコン本選に出場したこと。それで翌年、札幌ヤマハでのレコーディング・チャンスを得たようだ。東京では16chで録音できたが、札幌にはまた4chのスタジオしかないハンデがあったらしい。が、逆にそれを参加メンバーの一致団結に繋げ、既にプロジェクト化していたとは思えぬほどのバンド感を捻出した。稲村の歌声も、タツロー氏より若干歳上だけあって、少し大人びていてエロチック。声量やスキル云々ではなく、声そのものが艶っぽいのだ。

+5の音源は、79年に第一巻第百章が解散して以降のアルバム未収のソロ4曲と、前述した75年のポプコン音源。うちボズ・スキャッグス化した<御用心>は、14年にコンパイルした『Light Mellow SERENADE』で初CD化して以来の登場になる。何れにせよ、シュガー・ベイブ好きなら必聴よ。