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訃報続きで間が空いてしまったが、この2枚も稲村一志と第一巻第百賞と同様、ULTRA-VYBE / Solid Records 名盤1000円シリーズ【邦楽編】のシティ・ポップ・アイテム。日本のフォー・フレッシュメンなんて呼ばれるベテランのコーラス・グループ:タイム・ファイブの、クロスオーヴァー・ポップ志向の2作品だ。ハイ・ファイ・セットやサーカスに比べるとジャズ・ヴォーカルへの傾倒が顕著で、ライヴでは楽器をプレイしながらハモるのも珍しい。しかも結成51年にも関わらず、5人のメンバーに変更がない、のもスゴイところ。そんなタイム・ファイブが、70年終盤〜80年代初頭にかけてシティ・ポップやソフト&メロウと呼ばれる洗練された都会派サウンドを目指したトコロを、カナザワ監修・解説で2012年末に初CD化。その廉価リイシューが今回のご紹介である。

『翼を下さい』は78年の発売。プロデュースは、まさにハイ・ファイ・セットやサーカスを手掛けたトニー有賀こと有賀恒夫で、エグゼクティヴ・プロデューサーにはアルファ創設者:村井邦彦が控えている。アレンジのボブ・アルシヴァーは60年代から活躍する作編曲家で、ボーンズ・ハウ制作下でアソシエーションやフィフス・ディメンション、セルジオ・メンデス&ブラジル’66、サンドパイパーズなどを手掛けた。だから当然このアルバムも、そのようなソフト・サウンディングが特徴的。村井とも昵懇の間柄で、ハイ・ファイ・セットのL.A.録音盤『ザ・ダイアリー』(77年)は村井〜有賀〜アルシヴァーというトライアングルで作られた。その東京エディションが『翼を下さい』である。

内容はカヴァー中心。洋楽の訳詞曲ではニール・セダカが<離愁(Breakin’ Up Is Hard To Do)>と<雨の木の下で(Laughter In The Rain)>、バリー・マニロウが<ブギウギ誕生(Jump Shout Boogie)>と<あなたに捧げた歌(This One’s For You)>と2曲づつ取り上げている。更にマリリン・マックー&ビリー・デイヴィスJr.(元フィフス・ディメンション)の<愛への誓い(My Love For You)>があるが、AORファンの注目は、全英7位とヒットしたアレッシーのスウィンギン・ポップ名曲<Oh Lori>だろう。邦楽は林哲司や佐藤博の提供曲を歌っている。参加メンバーは村上ポンタ秀一(ットル)、高水健司(b)、佐藤博/羽田健太郎(kyd)、松木恒秀/杉本喜代志(g)、斉藤ノブ(oerc)、ジェイク・H・コンセプション(sax)など。

80年発表の『GENTLE BREEZE』は、大野雄二のアレンジで再評価が進んだレア・グルーヴ系人気盤。カヴァー中心だった前作から一転、メンバーの書き下ろしナンバー中心に構成した。こうしたオリジナル・アルバムはタイム・ファイブの長いキャリアでも他にないらしく、近しいところにいる大野をアレンジャーに選んだのも、その辺に理由がありそう。大野も自作2曲を提供した上、大野と縁深いボサノヴァ・シンガー:ソニア・ローザが<シュヴァ・ヴェイン>と<カーニバル>の2曲を提供している。

当時はあまり話題にならず、ズバ抜けたキラー・チューンも見当たらないが、収録曲のクオリティは一様に高く、“ジャズとポップの心地よいブレンド” というキャッチに偽りはない。その優しいメロディと繊細なヴォイス・タペストリーが、タイム・ファイブならではの世界観を創っている。まさに『ジェントル・ブリーズ』な好盤なのだ。

どちらもこの機会を見逃すと、手に入らないかもヨ〜。