paul_flemming pie achive

2010年にお目見えした『BAND ON THE RUN』からスタートした、ポール・マッカートニーのアーカイヴ・コレクション。これまでずーっと豪華装丁のボックス・セットでゲットし続けてきたけれど、今回登場の『FLAMING PIE』は、2CDセットのスペシャル・エデョションにスケール・ダウンしてオーダーした。このアーカイヴ・シリーズは、シッカリ吟味した最新デジタル・リマスターのオリジナル盤に、大量のレア音源と時に映像、そして興味深いグッズ類を「これでもかッ」状態にパッケージ。でも貴重は貴重だけど、シリースが進むほどに内容は徐々にトゥ・マッチとなり、価格もモア・エクスペンシヴに。それに対して、自分のオリジナルへの思い入れは、時代が下がるに連れて低くなっていく。何せカナザワはウイングス時代最強論者?だからね。最近は、いよいよバランスが悪くなってきたな、と感じていたワケだ。そこへきて、今回の『FLAMING PIE』アーカイヴのベーシックとなる "デラックス・エディション" は、5CD+2DVDで約4万円。対して9月に出るプリンス『Sign Of The Times 』の "スーパー・デラックス・エディション" は、8CD+DVDで2万弱。これじゃポールは4000円足らずの2枚組で済ませて、浮いた金でプリンスを、となってしまうよ

でも『FLAMING PIE』は、決してツマラナイ作品じゃない。 イヤむしろ、90年代後半以降のポールのアルバム群では一番好きかも。ただ『RAM』や『BAND ON THE RUN』に肩を並べる傑作というのではなく、『LONDON TOWN』みたいに愛着の湧く小品集というニュアンスだ。この頃すでにリンダの体調が思わしくなかった、というのは後から知った話だけど、ポールにしてはネイキッドな作りで、必要最低限のことを淡々とこなして仕上げた、そんな風情がある。茶目っ気たっぷりに人を楽しませるの好きなポールなのに、弱っていくリンダを前に、そういう精神的余裕がないのか。でも結果的にそのシンプルな佇まいが、逆にポールのルーツを感じさせる音に直結したりするから、聴き手に良い印象を残す。

オリジナル・プロデュースは14曲中8曲がジェフ・リン。そのほとんどはポールとジェフ2人で多重録音して完成させている(一部ホーン入り)。例外は、リンダ&息子ジェイムスのマッカートニー家が参加した<Heaven On A Sunday>と、リンゴ・スターが参加した<Beautiful NIght>と<Really Love You>。前者は86年頃に書かれたものの棚上げされていた楽曲。後者はリンゴとの再会ジャム・セッションから生まれたもので、ポールとリンゴの共作になっている。

残り7曲はポールの単独プロデュース or ジョージ・マーティンとの共同制作。ポール制作曲のパートナーは意外にもスティーヴ・ミラー。ジョージ・マーティンとのコラボは、このネイキッドなアルバムでも一番素の部分を担っているようだ。シングル・ヒットした<Young Boy>や<Somedays>は、リンダの仕事に付き添っていたポールが彼女を待つ間に書いたそう。そういう意味では、ポールにとっては辛くもあり、良き思い出もある特別なアルバムなのだろう。アレもコレも、と音源を引っ張り出していたら、いつの間にかこんな大層なアーカイヴになってしまった、そんなトコロだろう。

2枚組スペシャル・エディションのdisc 2には、5枚組のCD2 "Home Recording"とCD3 "In the Studio"からのダイジェストが入っている。普通のポール・ファンには、それで充分このアルバムの楽曲の成り立ちが伝わるのでは? 2ヴァージョン入っている<Colico Skies>や<Beautiful Night>、<Great Day>などは、完成ヴァージョン含めて進化・発展のプロセスが覗けるから、とても興味深い。「ポールが聴きたい」と思えばウイングス時代に手が伸びてしまう自分には、このヴォリューム感がちょうどイイな。

ちなみにストリーミングでは、ほぼCD4枚分の音源がアップされているので、ご参考まで。